【変わる相続税】<4完>生前贈与の特例 結婚・育児も非課税

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 今年1月から相続税が増税されたのに伴い、生きているうちに財産を子や孫らに贈与する「生前贈与」への関心が高まっています。税金が掛からない枠を活用しながら生前に家族へ預貯金などの贈与を行い、相続税の負担を少なくするという考え。生前贈与は、住宅取得や子育てでまとまったお金が必要になる現役世代の暮らしを豊かにすることにもつながります。

 そもそも贈与とは、財産を贈る人(贈与者)と、もらう人(受贈者)の合意で成立。贈与した財産は贈与税の対象になります。受贈者は、1年単位で贈与税額を計算して課税される「暦年課税」か、贈与税の納税を贈与者が死亡した際の相続税として納税できる「相続時精算課税」を選択する必要があります。

 まず、暦年課税から説明しましょう。贈与税は相続税よりも負担が重くなりやすいのですが、年間贈与額110万円までは基礎控除額として贈与税が掛かりません。例えば、10年かけて子ども2人に限度額いっぱいで毎年贈与していくと、2200万円の財産を無税で移転することができます。

 ここで注意してほしいのがいわゆる「名義預金」。親や祖父母が子や孫に知らせずに子孫名義の預金口座を開設して入金し、通帳や印鑑を自分で管理している場合などを指します。贈与と認められるには、贈与される人に受け取る意思があり、資産がその人に確実に移転して自由に使える必要があります。名義預金では名義を借りただけとみなされ、相続発生時に相続税の対象になってしまいます。

 相続時精算課税では、親らから受けた贈与2500万円までは特別控除があり、これを超える部分は20%の贈与税。相続時には、贈与財産と相続財産を合計して相続税として精算します。従来は贈与者が「65歳以上の親」、受贈者は「20歳以上の子」でしたが、今年1月からの税制改正で贈与者が「60歳以上の親か祖父母」に変更され、受贈者に「20歳以上の孫」が追加されました。

 九州北部税理士会の末吉勇税理士は「後日、贈与の事実を証明しやすくするためにも、身内の間でも大げさと思わずに契約書を取り交わすなど贈与の記録を残しておいた方がよいでしょう」と助言します。

 § §

 子や孫への贈与では、これまで住宅取得・改築や教育資金に限定してまとまった額を一括で非課税とする時限的な特例がありました。閣議決定された2015年度の税制改正大綱で、住宅や教育資金の非課税枠を拡充したり、延長したりするほか、15年度から結婚や出産、育児にかかる資金贈与についても非課税特例が新設されるようになりました。

 どのような特例が用意されるのか具体的にみてみましょう。まず、住宅の購入や増改築の資金の贈与は、14年度で最大1千万円までは贈与税の申告を要件に課税されないことになっていましたが、これを19年6月末まで延長。非課税枠も15年度最大で1500万円に拡大されています。

 教育資金については、30歳未満の子や孫への教育資金贈与が1500万円まで非課税になります。入試の受験料、入学金、授業料、保育料、学用品の購入費、修学旅行費、給食代など。ピアノや水泳、学習塾などの学校以外の教育費も500万円まで非課税となります。15年末までの時限措置でしたが、19年3月末まで延長になります。

 新設される結婚や子育ての資金における特例は、結婚式の費用やベビーシッター代、不妊治療費などで、親や祖父母から子や孫がまとまったお金をもらっても1人につき1千万円(結婚費用300万円)までは贈与税がかからないというものです。

 末吉税理士は「父母や祖父母から子や孫が必要なたびにもらう、通常必要とされる程度の生活費や教育費は非課税。結婚や出産、育児も生活費に含まれるが、一括して非課税とすることで現役世代の消費を促す狙いがある」と話しています。

 =おわり


=2015/01/31付 西日本新聞朝刊=

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