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【生きる 働く 第2部】おひとり非正規の不安<2>母子貧困の連鎖が…

母子家庭を支援する制度などを紹介する母子寡婦福祉手帳。シングルマザーの強い味方だ
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 病院の窓口で、人の目が気になる。自己負担なしで診療を受けることができる生活保護の医療券。「自分名義の健康保険証がほしい。コソコソするのは嫌」。6歳と3歳の女児2人を1人で育てる女性(26)=福岡市=が働き始めた理由だった。

 20歳で結婚し、夫の暴力を理由に離婚したのは2年前。2人の幼子を抱え、家を飛び出した。養育費はもらえない。仕方なく1年間、生活保護を受けた。

 働きたくても子どもの預け先がないと仕事も探せない。区役所の担当者に事情を話し、長女を認可保育所に預けることができたが、保育所で「1カ月以内に必ず就職します」という誓約書を書かされた。

 週3日ずつ二つのパートを掛け持ちする。ダブルワークでも収入は月12万円ほど。そのほか、月3万円弱の児童扶養手当を頼りに、ぎりぎりの生計だ。

 安定した仕事を探したい。しかし、独力で子育てと仕事を両立するには、どうしても短時間で低賃金の非正規に限られてしまう。実家にも頼れない。「いくら働いても暮らしがよくならない。先が見えないんです」。女性のため息は深い。

 《2013年の国民生活基礎調査によると、ひとり親家庭の「相対的貧困率」(全国民の年間所得を高い順に並べて、真ん中の人の所得額の半分に満たない人が全体に占める割合)は54・6%(子どもがいる現役世帯全体では15・1%)。11年度の全国母子世帯等調査によると、母子世帯の母自身の平均年間就労収入は181万円で、父子世帯の父自身の360万円の半分ほどにとどまっている》

 振り袖姿がまぶしかった。北九州市の女性(50)は1月、一人娘の成人式に立ち会った。

 30歳のとき、浪費癖がある夫に見切りを付け離婚。パートやアルバイトを掛け持ちしながら育てた。

 長女が中学3年の冬、女性は長年の過労がたたって倒れた。長女は高校受験を控えていたが、「お母さんのそばにいる」。進学せずに小売店のレジ打ちのパートをしながら看病してくれた。生活保護世帯になり、8万円ほどの月給はほとんど生活費になった。

 今、長女はパソコンの資格を得て就職活動中だが、なかなか正規の仕事は見つからない。「せめて高校に行かせてやりたかった。申し訳ない…」。娘の将来が、心配でならない。

 《厚生労働省と文部科学省の調査によると、13年で全国の高校進学率が98・4%に達しているのに対し、生活保護世帯の場合は89・9%にとどまる。親の貧困が子どもの世代に引き継がれ、固定化する‐。貧困と子どもの教育は直結した問題だ》

 子育て中のひとり親が仕事を見つけるのは、簡単ではない。

 保育所は入所希望者が多く、「求職中」ではなかなか子どもを預けられない。就職しようとしても、雇用する側に「子どもが熱を出したらどうするのか」と敬遠される。いざというときに頼れる人がいない…。残業や長時間労働が求められがちな正社員の仕事は、さらにハードルが高い。

 「でも、子どもがいなければ、ここまで働けなかったと思う」と冒頭の女性は言い切る。「自分はちゃんと勉強しなかったし、資格とか持ってないから正規の仕事は難しい。娘2人には大学に行かせたい。私みたいな苦労はさせたくないから」

 《11年度調査で、母子世帯数は約123万8千、父子世帯数は約23万3千。この30年ほどで母子世帯は1・7倍、父子世帯は1・3倍に増えている》

 ひとり親に吹く、冷たい風。すべては娘2人のために。女性は、「頑張る」という。


=2015/02/11付 西日本新聞朝刊=

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