西日本新聞電子版 1周年記念プレゼント

【生きる 働く 第2部】おひとり非正規の不安<3>結婚したいが収入は…

景気は回復基調にあるが、昨年12月の全国の有効求人数は非正規が半数を超えた。中高年の雇用環境も厳しい=福岡市の中高年就職支援センター
景気は回復基調にあるが、昨年12月の全国の有効求人数は非正規が半数を超えた。中高年の雇用環境も厳しい=福岡市の中高年就職支援センター
写真を見る

 ずっとこの会社に勤め、結婚して、子どもが生まれ、幸せな毎日を過ごす-と思い描いていた。「自分の人生は終わったようなもの」。大学卒業後、正社員で入社した給食サービス会社を27歳で辞めるとき、福岡市の独身男性(42)は「切腹するような思い」だった。

 営業職で採用されたはずが、研修という名目で社員食堂や病院給食の調理場に立った。産業ロボットのような正確さで野菜を切り分け、煮えたぎる大鍋の具材を大きなへらでかき混ぜる。午前5時から翌日の未明まで立ちっぱなしで働いたこともあった。休日は泥のように眠った。それでも月給は手取り16万円ほど。体力的に限界だった。

 すぐに再就職活動を始めるが、ハローワークも求人誌も募集は派遣かアルバイトばかり。正社員への玄関は「新卒」しか開かれていないことを思い知らされる。

 ホテルの裏方、トラック運転手…。同じ仕事に長く就くことも難しく、賃金も上がらなかった。33歳のとき、学生時代から付き合っていた女性に、別れを告げられた。

 離婚した母親は苦労して、自分たち3人の子どもを育ててくれた。それだけに、大人になったら家族を幸せにする、と夢見てきたのに。

 「結婚したいけど、月収15万円ほどで家族を養っていく自信がない。そもそも、非正規の四十男に振り向いてくれる女の人っています?」

 《2010年の国勢調査によると、年齢別の未婚率は、「25~29歳」で男性71・8%、女性60・3%、「30~34歳」で男性47・3%、女性が34・5%と、男女とも年々増加している。要因として国は女性の高学歴化や就業率の上昇などを挙げるが、雇用者全体に占める非正規の割合が14年に男性21・7%、女性56・6%と、いずれも10年前から5ポイントほど増えていることも、背景にあるのではないか》

    ◇      ◇

 男性(35)は、高校中退後、ずっと派遣社員だった。

 就職氷河期の真っただ中。30歳で佐賀県内の実家に戻るまで、東海や北関東など三十数回も住所を変えた。自動車部品の組み立てや液晶パネルの装着…。大手メーカーの関連工場で派遣社員として働いてきた。「次の工場に行ってもらいます」。登録する人材派遣会社のひとことで、用意されたアパートに移動する。長くて数カ月、短くて1週間足らず。女性と出会ったり交際したりする時間はなかった。

 世界的不況のリーマン・ショック(08年秋)直後に雇い止めに遭った。両親と同居し職を探したが、正社員はもちろん、九州にはこれまでやってきた月収25万円を超えるような派遣の仕事は見つからなかった。腰を据えて求職活動できず、失職すれば生活のために「目の前の仕事」に飛びつかざるを得ない。今は、午前9時から午後5時、月25日働いても14万円ほどの倉庫作業にパートとして汗を流す。

 《厚生労働省の調査(13年)によると正社員の平均月給は31万4千円で、非正規19万5千円と大きな開きがある。国立社会保障・人口問題研究所の調査(10年)では、結婚の意思がある18~34歳の未婚者に1年以内に結婚する場合の障害になるものとして男女とも「結婚資金」という回答が最も多かった(男性43・5%、女性41・5%)》

 月給から社会保険、同居している親への生活費、軽自動車のローンを支払うと、月3万ほどしか残らない。「今の生活が精いっぱい。結婚なんて考えられない」。職場から帰宅途中の車内で、缶コーヒーを飲む瞬間が至福の時という


=2015/02/12付 西日本新聞朝刊=

→電子版1周年記念!1万円分賞品券やQUOカードが当たる!!

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]