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【生きる 働く 第2部】おひとり非正規の不安<4>超氷河期 職を転々と

住宅販売会社を辞めた女性が消費者金融に借金した明細書のコピー。今も返済を続けている(画像の一部を加工しています)
住宅販売会社を辞めた女性が消費者金融に借金した明細書のコピー。今も返済を続けている(画像の一部を加工しています)
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 「借金してでも穴埋めしろ」。住宅販売会社の営業社員だった福岡市の女性(35)は社屋の一室に閉じ込められ、数時間にわたり社長から怒鳴られた。

 玄関の段差が高すぎる。扉がうまく閉まらない…。建売住宅を購入した客からのクレームにうまく対応できなかった。設計や施工が悪いはずなのに修理費を「自腹」で払うよう求められた。社長に車で連れ回され、消費者金融数社から100万円を超える借金を背負わされた。

 20歳で短大を卒業したのは2000年。就職氷河期の逆風をもろに受けた。正社員の内定はもらえなかった。

 「インテリアの仕事に就きたい」の一念で、雑貨店のアルバイトやホームセンターの契約社員でキャリアを積んだ。10年間、非正規で頑張ったが、給料は上がらない。正社員への昇格制度はあったものの、対象の職には本部から正社員が次々に送られてきた。

 5年前、「未経験者歓迎」というハローワークの求人票に飛びついて手にした「正社員」だったが、「信じられないくらいのブラック(企業)だった」。昨春、辞表を出した。

 《景気の回復基調がみられ、2013年11月、有効求人倍率は6年1カ月ぶりに人手不足となる1倍台を回復した。しかし、求人全体に占める正社員の割合は、第2次安倍政権発足時の12年12月の49・0%から、14年12月には48・2%に低下している》

 「身分が安定した正社員になって、やりがいのある仕事をしたかったのに。また、ブラックに引っかかってしまわないか…」

 ハローワークで、女性は限られた中途正社員の求人票に、目を凝らす。

 《バブル崩壊後の1994年ごろから10年ほどは、「超就職氷河期」と呼ばれた。文部科学省の調査によると、90年の大卒の就職内定率は8割を超えていたが、2000年には55・8%と1950年以降で初めて6割を切った。そのころ新卒で就職活動をした世代に相当する35~44歳の非正規は、現在約397万人で、この世代全体の3割に上る(2014年労働力調査)》

 4年前から外資系損害保険会社の事務職として働く契約社員女性(37)は、「たたき上げ」を自任する。実力のある「スーパー非正規」だ。

 就職氷河期で迎えた就職活動では、本命ではない会社にしか内定をもらえなかった。時には正社員、時には非正規。これまで5社を渡り歩いた。

 転職には資格がある方が有利と聞かされるが、「資格と実務は全然違う。自分は現場で使える人間になりたい」。目の前の仕事に全力で向き合うことで、ステップアップしてきたつもりだ。

 同じ仕事をしているのに、正社員の後輩たちより給料が安いのはしゃくに障る。一方、自分がいないと事務が回らないことに快感を覚えることもある。

 年収約400万円。福岡県内の実家で60代後半の両親と暮らす。親の年金を合わせた「1カ月の財布」は50万円強。貯金は400万円を超える。このまま結婚しないかも。「それも私の人生」と割り切っている。

 今、困っているわけではない。走り続けて勝ち取った「外資の仕事」だ。とはいえ、月給と年3回のボーナスは、退職金が分割して前払いされている。しかも1年ごとの契約更新。

 「契約が打ち切られたらどうしよう。親に介護が必要になったら、自分1人になったら。だれに頼ればいいのか」

 今は、できるだけ先のことは考えないようにしている。


=2015/02/13付 西日本新聞朝刊=

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