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【生きる 働く 第2部】おひとり非正規の不安<5完>社会問題との認識を

非正規雇用の増大は「日本の社会保障の根幹を揺るがす問題」と主張する連合福岡ユニオンの寺山早苗書記長
非正規雇用の増大は「日本の社会保障の根幹を揺るがす問題」と主張する連合福岡ユニオンの寺山早苗書記長
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 独身の非正規雇用者「おひとり非正規」を取り巻く厳しい状況をここまで紹介してきたが、そもそもなぜ、非正規雇用が拡大しているのか。不安を解決するための処方箋はあるのか。非正規雇用問題に詳しい連合福岡ユニオン(福岡市)の寺山早苗書記長(48)に聞いた。

 安倍政権の経済政策「アベノミクス」の影響で、有効求人倍率が上昇するなど雇用環境は改善しているといわれるが、総務省が1月に発表した2014年平均の非正規労働者数は、約1962万人。役員を除く雇用者全体に占める割合は37・4%となり、記録が残る1984年以降で最高を記録した。正社員(約3287万人)が7年連続で減少しているのに対し、非正規は5年連続で増加。統計的には雇用環境は改善基調にあるが、実態は、正社員が先細りする一方で不安定な非正規が拡大している。

 今や雇用者の2・5人に1人は非正規。なぜ、こうなったのか。

 バブル経済崩壊後の1995年、旧日経連(現経団連)が公表した「新時代の日本的経営」にヒントがある。財界は労働者を少数の「幹部候補」「専門職」、そして大多数の「非正規」の3グループに分けることを打ち出した。労働力を弾力化、流動化させながら人件費を節約し、競争力を高めて生き残ろうという考えだ。政府も労働者派遣法を緩和するなどして後押しした。

 日本の会社が経営状態に応じて従業員を都合よく解雇したり、賃金をダンピングしたりする「調整弁」にするかじを切った転換点になった。その結果、今にいたるまで大量の非正規が拡大再生産されている。「世界で一番企業が活動しやすい国」を掲げる安倍政権が、実現を目指す「労働者派遣法改正」や残業代ゼロの「高度プロフェッショナル制度」はこうした悪い流れを加速させるものでしかない。

 私自身、33歳のときに正社員で働いていた会社から、「“高齢女子”は雇い続けない」と言われた。30歳以上の女性正社員を非正規に置き換えるのを目的に、退職勧奨されたのだ。個人加入のユニオンに駆け込み、団体交渉の結果、会社は退職勧奨を撤回した。ただ、「11年間一生懸命働いてきたのに…」と心が折れてしまい、退職した。

 現在、連合福岡ユニオンでパートや派遣、契約社員など非正規で働いている方の相談を受けているが、劣悪な雇用環境、条件で働かせる悪質な会社が増えている実感がある。「文句を言えば契約を切られるのでは」など、有期契約の立場の弱さから泣き寝入りするケースは少なくない。非正規であっても、違法な解雇や残業代の未払いに対しては撤回させる権利があることを知ってほしい。

 2013年の国民生活基礎調査によると、世帯総数(5011万2千世帯)のうち、戦後の標準世帯とされてきた「夫婦と子どもの世帯」は29・7%でトップだが、「単独世帯」も26・5%。約30年間で標準世帯の構成比が41・4%から11・7ポイントも低下しているのに対し、おひとり世帯は18・2%から8・3ポイント上昇した。

 介護、医療、年金、子育てという現在の社会保障制度は標準世帯をベースに設計されているが、単独世帯の急増でほころびが目立っている。今後も世帯主が低所得で不安定な非正規が増えることは、財源面などから制度の根幹を揺るがすことにもなりかねない。「努力が足りない」「働き口はある」などと言っている場合ではない。非正規雇用の問題は「個人の事情」でなく「社会問題」という認識を全ての世代が持つことが解決へのスタートラインになるはずだ。

 =おわり


=2015/02/14付 西日本新聞朝刊=

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