保育所は迷惑施設か<下>福岡市博多区の「隅田保育園」 寄り添い 築いた 信頼関係

隅田保育園近くの御笠川では、隅田町町内会が集めたこいのぼりが、今年も気持ちよさそうに泳いでいる
隅田保育園近くの御笠川では、隅田町町内会が集めたこいのぼりが、今年も気持ちよさそうに泳いでいる
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 ●住民「園児は地域の子ども」 園「見守られている」 
 保育所をめぐる近隣住民とのトラブルが全国各地で起きている。先週(18日)は近隣住民の反対運動に遭った福岡県古賀市の新設保育所が「子どもの声がうるさい」との要望を受け、高さ3メートルの防音壁を設置した事例を紹介した。今回は近隣住民と良好な関係を築いた保育所にスポットを当てる。

 福岡市博多区の認可保育所「隅田保育園」を訪れると、すぐ近くの御笠川に、50匹ほどのこいのぼりが気持ちよさそうにはためいているのに気付いた。隅田町町内会が「園児たちに喜んでもらいたい」と1997年から続ける恒例行事。不用になったこいのぼりを、最近ではインターネットも使い、全国に呼び掛けて集めている。

 80~90年代、園に近い川の部分は、生活排水で汚れ、家電製品や家具などの不法投棄も相次いでいた。町内会は「子どもが通うのにきれいにしなければ」と、不法投棄物の回収や清掃を続けた。こいのぼりの設置はその一環だ。町内会の斉藤竹美さん(79)は「保育園の子どもはわしらの子や孫と同じ。地域のみんなで園児を見守り、育てる義務がある」と言い切る。

 きれいになった御笠川では毎年8月、ドラム缶と廃材を組み立てた特製のいかだに園児を乗せて遊覧する。船頭役や監視員は町内会が引き受ける。タケノコ掘り、芋掘り、餅つき…。春夏秋冬、保育園の行事にはいつも町内会が寄り添う。

    §   §

 隅田町は工場や民家が混在し、古くからの住民が多い。保育所ができたのは1974年。もともとは市立で、2007年に民営化された。

 約20年前、新築マンションの住人から「保育園の運動会の練習がうるさい」と苦情が寄せられたことがある。町内会役員が「夜まで練習しとらん。ちょっとだけ我慢してほしい」と管理人に頭を下げると、苦情はなくなった。保育園をめぐる問題が起きるといつも、町内会が自分たちの問題として解決策を探ってきた。

 その労に報いようと園側も「顔が見える関係」を続ける努力をしてきた。

 秋には楽しい運動会 暑い最中の練習は ご近所迷惑ごめんなさい

 同園の「応援歌」には、地域の人たちへの配慮や感謝の気持ちが込められている。作詞したのは、07年に就任した木林純子園長。運動会などで子どもたちが元気に歌うと、この歌詞の部分で地域の人たちはくすっと笑うという。

 木林園長は地域の人たちについて「ありがたくて仕方ない」という。保育士らも地域の清掃をしたり、敬老会に園児が参加したり、積極的に地域と関わっている。送迎マナーについても親たちに繰り返し呼び掛けている。「地域のみなさんにお世話になっていることを保護者にも分かってほしいし、感謝してほしい」という思いからだ。

 どうすれば保育所と地域住民のトラブルを解消できるのか。「子どもの声は騒音なのか」「今どきの親はマナーが悪い」と意見が対立したままでは、最も大切な子どもの育ちが置き去りにされてしまわないか。40年以上かけて築いてきた隅田町の良い関係は、互いに寄り添い、分かち合えるコミュニティーづくりの大きなヒントになるだろう。


=2015/04/25付 西日本新聞朝刊=

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