依存症 家族に学習会 医師ら専門家 悩みケア 肥前精神医療センター 治療促す接し方 助言

心理療法士の助言を受け、依存症者との接し方を学ぶ家族
心理療法士の助言を受け、依存症者との接し方を学ぶ家族
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 失業、家庭内暴力、借金、犯罪…。飲酒や薬物、ギャンブルへの欲求を自制できない「依存症」になり、社会生活をうまく送れずに苦しむ人がいる。治療可能な疾患だが自覚がないことも多く、周囲から「性格や意志の問題」と冷ややかに見られがち。立ち直らせようと奔走する家族も万策尽きて精神的に追い込まれるケースが少なくない。どうしたらいいのか。佐賀県吉野ケ里町の国立病院機構肥前精神医療センターは、そんな家族を支援する「学習会」に取り組んでいる。

 あなたがお酒を飲むせいで家族は苦しい。治療にも行ってくれない。もう耐えられない-。「これをどう言い換えてみましょうか」。心理療法士の諸隈悠さん(27)が語りかける。

 「『治療を受けてくれたらすごくうれしい』はどうでしょう」と参加者の女性が口を開く。「『仲良く暮らしたい、一緒に頑張ろう』と言ってみようかな」と男性。

 諸隈さんは「皆さん、ここに来るまで本当に大変だったでしょう。本人を変えるには、あの手この手が必要。そのこつを身に付けていきましょう」と参加者を励ました。

 昨年10月に始まった依存症者の家族を対象にした学習会「F.C.(ファミリークラブ)肥前」の一場面。本人に酒や薬、ギャンブルを思いとどまらせ、治療を促す効果的な接し方や考え方を心理療法士や医師、看護師らが教えている。

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 学習会では、問題行動を繰り返す依存症者に散見される「隠れて使う」「飲んでいないとうそをつく」といった特徴も学ぶ。

 その上で「『あなたが…』と責める表現よりも『私はこう思う、こうしてほしい』という言い方を」と提案。「しらふのときに一緒に過ごすのが好き」「つらいときは相談してくれるとうれしい」と具体例も教えている。すぐに家庭で実践できるよう「隠れて薬を使っていたとき」「二日酔いで仕事を休んだとき」などの場面も想定し、声に出したりノートに書いたりして練習してもらう。

 学習会は、依存症者の家族が胸の奥に詰まった悩みを吐露し、心の負担を軽くする貴重な場でもある。

 息子が薬物依存という男性は「分かっていても、つい厳しいことを言ってしまう」と語った。女性は「先週、静かに飲むならいいと言って夫に酒を渡してしまった」と告白。何人もの参加者が自分のことのように共有しうなずいた。

 看護師が「一歩ずつ、焦らず、できることからで大丈夫ですよ」とフォローすると、女性はほっとしたような表情を見せた。

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 センターの武藤岳夫精神科医長(41)によると、依存症は性格に関係なく制御力を失う疾患だ。「叱ることや泣き言だけでは、かえって依存を深めてしまう。過剰な世話焼きも逆効果。コミュニケーションの工夫が必要」と指摘する。

 学習会は毎月第4金曜日に開催。1回2時間。全6回、半年間が一区切りとなっている。参加費は1回千円。定員はなく、希望者は途中からでも全員参加できる。武藤さんは「長い間、悩んでいる人も多いと思う。独りで苦しまず気軽に相談して」と呼び掛けている。肥前精神医療センター=0952(52)3231。

 【ワードBOX】肥前精神医療センターの家族支援

 肥前精神医療センターは依存症治療を普及、啓発する全国5府県の厚生労働省モデル事業(2014~16年度)の拠点に九州で唯一選ばれた。この一環で、家族を対象にした学習会を昨年10月に始めた。今年3月までの第1期には、福岡、佐賀両県から延べ約70人が参加。第2期が4月24日に始まっている。センターは4月、家族が心理療法士に個人で相談できる依存症相談室(要予約、1時間2千円)も開設した。


=2015/05/16付 西日本新聞朝刊=

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