【九州北部豪雨 被災地レポート】<上>福岡・黒木町 10年早く問題が顕在化

茶畑の復旧作業でバケツリレーをして土を運ぶ小森耕太さん(右)とボランティアたち
茶畑の復旧作業でバケツリレーをして土を運ぶ小森耕太さん(右)とボランティアたち
写真を見る

 九州北部豪雨から約5カ月。山深い福岡県八女市黒木町笠原地区の最上流部にある鹿子尾(かごお)集落に住み、ムラとマチの橋渡し役として、ボランティアの受け入れなどに奔走してきたNPO「山村塾」で事務局を務める小森耕太さん(37)に、被災地の現状と今後をリポートしてもらった。

 ■延べ2千人活動

 山や川、田畑を眺めるとまだまだ生々しい傷痕が残っているが、おかげさまで多くの方々に支えられ、地域は復興に向けて着実に歩を進めている。

 被災後、山村塾は避難所運営の手伝いや災害ボランティアの受け入れ、募金活動などに取り組んできた。ボランティアは7月22日から11月末までに計79日間活動。家屋からの泥出し作業や棚田、茶畑、水路の復旧など、延べ約2千人に手を貸してもらった。

 多くの人々が泥と汗にまみれ、復旧作業に取り組む様子は、くじけそうになる被災地を励ましてくれた。中でも中学生や高校生、大学生といった若い世代が、夏休みや週末を利用して駆けつけてくれたときは、地域に笑みがこぼれた。

 この欄でもお願いした復興基金には、271件682万円もの寄付を頂いた。災害ボランティアなどにありがたく利用させていただいている。心のこもった支援物資など、この場を借りてお礼を申し上げたい。

 11月18日には復興をテーマに「第27回笠原まつり だっでん祭」が開かれた。歴史ある住民手づくりの祭りも、今年は断念すべきだとの意見もあったが、若手を中心に「こんなときこそ地域を盛り上げよう」「笠原を応援してくれた方々にお礼の気持ちと笠原は元気ですというメッセージを伝えよう」と実施を決定。当日の来場者は1500人を超え、大いににぎわった。

 ■他地域にも波及

 隣の星野村やうきは市で農地復旧の活動が始まったことも、朗報の一つ。災害ボランティアの受け入れは公的なセンターの閉所後、組織的には行われていなかったが、笠原を参考にし、また刺激として、棚田や茶畑の復旧活動が進められるようになったと聞いた。

 農地の復旧には行政の補助事業がある。だが、小規模な農地復旧には利用しづらく、棚田に広がった石拾い、茶畑の畝に入り込んだ土砂の撤去といった人力作業への補助は、なかなか難しいようだ。特に今回は規模も箇所も桁違いで、農家の力だけでは何年かかっても元には戻せない。山村塾の取り組みが、他地域にも波及したとしたら、それはとてもうれしい。

 ■復旧に2-3年

 手作業でできる農地の復旧作業は、ボランティアのおかげでかなり進んだが、多くは手付かずのまま。基幹道路は崖崩れで2カ所が通行止め、迂回(うかい)路も複数が仮復旧で大型車両は進入できないのだ。補助金の査定が今月までかかるため、本格的な計画や復旧工事は年明けからとなり、農地と農道の復旧には少なく見積もっても2~3年はかかる。

 今なお仮設住宅やアパートでの仮住まいをされている人もいる。自宅そのものの被害は免れたものの、通学や通勤のために市中心部へ移動した人、農地の大半を失ってやむを得ず運送業や建設業などで現金収入を得ている人もいる。

 花や野菜を作り毎日出荷していた農家は、災害後すぐに手取り収入が皆無に。茶農家は収穫後の被害だったことは不幸中の幸いだったが、流された茶の木を植え替え、また収穫できるまでには5~6年かかる。農業があってこそのこの地域で、道路や農地の復旧まで農家が農業を継続できるかどうか、とても不安だ。

 ■正念場を迎える

 今回の災害を受け、この地域が抱えていた過疎化や高齢化、耕作放棄地の問題などが10年早く顕在化した気がする。学生時代からこの地に通い、Iターンで移住して13年。これまで10年、20年先を見据え、地域を維持し、棚田や森林の保全をどう進めるかアイデアを練ってきたが、それらに今すぐ取り組まなければならない状況が来た。特にこの2~3年が正念場であり、その後も継続した取り組みが必要だと感じている。

 そのために何をするか。次回、仲間と考えたその方策を読んでほしい。

    ×      ×

 ●NPO「山村塾」 小森耕太さん

 1975年、福岡市生まれ。九州芸術工科大学(現九大)芸術工学部環境設計学科在学中に山村塾の活動と出合う。2000年、卒業と同時に中山間地直接支払い制度などを活用し、山村塾の事務局スタッフとして福岡県八女市黒木町に移住。廃校の小学校を活用した笠原東交流センター「えがおの森」を拠点に、森林ボランティアの技術講習指導などに当たる。妻と長男(3)の3人暮らし。

    ×      ×

 ●ワードBOX=山村塾

 都市と農山村住民とが一体となり、棚田や山林といった豊かな自然環境を保全することを目的に1994年、福岡県八女市黒木町で発足。笠原地区の受け入れ農家2戸で、稲作と山林の体験コースを柱に活動している。内容はホームページに詳しい。山村塾=0943(42)4300。

=2012/12/19付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]