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【九州北部豪雨 被災地レポート】<下>福岡・黒木町 奉仕や消費での応援を

【上】棚田の石積み作業【下】春の茶摘み。ボランティアの手があれば仕事もはかどる
【上】棚田の石積み作業【下】春の茶摘み。ボランティアの手があれば仕事もはかどる
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里山の産物を食べることもマチからできる支援の一つ
里山の産物を食べることもマチからできる支援の一つ
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 7月に発生した九州北部大豪雨で、甚大な被害を受けた福岡県八女市黒木町笠原地区。高齢化や過疎化など、各地の農山村が抱える問題が10年早く顕在化したという中で、どう地域を再構築していくのか。笠原地区の最上流部にある鹿子尾(かごお)集落で、復旧に向けた活動を展開するNPO「山村塾」事務局の小森耕太さん(37)によるリポートは、今後の展望へと続く。

 ■里山仕事の講座

 来年やるべきことの一つは、災害ボランティア活動による農地復旧の継続だ。

 年が明けると、棚田の石積み修復、茶園の造成、農道や水路の復旧など、行政の補助金による農地復旧が本格化する。だが、すべての箇所が対象になるわけではないし、機械がそれらを元通りにリセットしてくれるわけではない。

 いろんな局面で、人の手でしかできないことが、たくさん出てくる。地域のニーズを的確にくみ取り、また農家に寄り添い、ボランティアが汗を流す場面は、さらに増えると思われる。

 二つ目は、耕作放棄地対策。水路や農道が被害を受け、一時的に耕作が困難になる田畑や、離農、離村した人の農地の維持管理をどうするか、である。

 これについては、ソバやイモ、野菜作り、棚田の石積みや竹林整備といった里山仕事をプログラム化することで対応できないか、と考えている。山村塾はこれまで堆肥づくりや耕運機、刈り払い機の講習会など、誰もが安全に楽しく農業に関われるような講座を開いてきた。その拡大版だ。

 将来の田舎暮らしや就農に向けて農林業を学びに通う人、住み込みでじっくり田舎暮らしを体験しながら棚田を守るボランティアなどを募り、都市の人々が山村に入るきっかけの場をつくりたい。

 来年はいろんなレベルの講習会を随時実施するとともに、集落に泊まり込み、里山仕事を実践で学ぶ80日間の長期ボランティア合宿を2回、募集する予定だ。

 ■棚田を守るため

 三つ目は、棚田での米づくりの継続だ。機械が入りにくく、大量生産に向かない棚田での米づくりを経営的に成立させるのは難しいといわれる。

 だが、棚田のお米は生活排水や工業排水が流れ込まない、山のきれいな水を使って育てられる。水温が低いことなどから収量は限られるが、寒暖の差の激しさがおいしいお米を作る。

 幸いなことに笠原には、熱意ある農家や若手の農家が多くいる。彼らと一緒に棚田での米づくりを行うグループをつくりたい。適材適所で協力しあう仕組みがあれば、多くの農地の維持につながるし、地域の特色を生かした商品づくりにも取り組みやすくなる。

 個々の農家で後継者を育てることが難しくても、地域で育てる仕組みができないだろうか、と思うのだ。

 ■一度足を運んで

 ただ、こうしたムラの取り組みが成り立つのは、マチの協力があってこそ。それは、食べることによる応援である。

 例えば、日本人のお米の消費量は年間60キロ。この半分を外食と仮定すると、親子3人の家庭で約90キロになる。これは、この地区の棚田1枚(200~300平方メートル)で収穫される量に当たる。つまり、マチの家庭に米を年間契約してもらえれば、笠原の棚田が1枚守られることになる。

 米だけではない。笠原には、お茶、シイタケ、野菜などに加え、餅や酒、みそといった加工品もある。マチとムラでそうした関係性をつくれれば、農家の経営も安定。後継者のために基盤を残そうと、農地の復旧にも弾みがつくだろう。

 山村塾は、20年前から都市農山村連携による棚田保全や森林保全に取り組んできた。今後もマチとムラ、地域と地域の手を結ぶ活動を展開していく。仕事はある。宿泊でも日帰りでも構わない。ぜひ一度、笠原に足を運んでほしい。

    ×      ×

 ●NPO「山村塾」 小森耕太さん

 1975年、福岡市生まれ。九州芸術工科大学(現九大)芸術工学部環境設計学科在学中に山村塾の活動と出合い、Iターンでスタッフに。廃校を活用した笠原東交流センター「えがおの森」を拠点に都市と農山村の交流事業を展開。同塾=0943(42)4300、メール=sannsonn@f2.dion.ne.jp

=2012/12/26付 西日本新聞朝刊=

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