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面会交流の調停、10年で3倍 夫婦の別れ 親子の別れに させないで サポートの仕組み整備を

「親が離婚しても自分は愛されているのだと子どもが実感できる仕組みづくりが必要」と話す宮崎昭夫さん
「親が離婚しても自分は愛されているのだと子どもが実感できる仕組みづくりが必要」と話す宮崎昭夫さん
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 ■新訳男女 語り合おう■

 離婚や別居をしてからも親と子が触れ合う「面会交流」。子どもを精神的に安定させ、自尊心を高めるとして、海外では公的機関が親の間に入って調整するなど援助に乗り出す国もある。一方で日本では、離婚件数が減少傾向にもかかわらず、親が「子どもに会わせてもらえない」として家庭裁判所に持ち込むケースが増えている。実情と課題を探った。

 「お母さんに会いたくないわけではないけど、会うとお父さんが困るので、自分も困る」-。九州北部の40代女性は3年前、家裁の資料の中で、離れて暮らす小学生のわが子の気持ちを知り、ショックを受けた。

 夫婦間の問題で別れ、親権は夫へ。当初は毎週末に会える約束だった。次第に会わせてもらえなくなり、家裁に調停を申し立てたが不調に終わった。「審判」へ移行し、2カ月に1回8時間の交流を認める決定が下される。それも守られず「間接強制命令」に至った。

 久しぶりに「お母さん」と呼ばれ、うれしかった。ところが今度は、子ども自身が「会いたくない」と言い始めた。成長するにつれて、今の家族や自分にも気を使うようになってきたのかもしれない。「親に会いたい時に会いたいと言える状況をつくってあげられたら…。親の都合でつらい思いをさせて申し訳ない」

 司法統計年報によると、2011年度に家裁が面会交流で新規に受理した調停の数は8714件で、10年前の3倍に上った。

 背景について、早稲田大学法学学術院教授の棚村政行さん(民法)は「子どものいる夫婦の離婚が増え、今は6割ほど。少子化も進み、夫婦だけでなく、祖父母にとってもかけがえのない存在になっている」と説明する。申し立ての大半を男性が占めており「子どもに関わりたい父親が増えている」という側面もある。

 親の感情や「家」の事情が優先され、子どもの心が置き去りにされていないか-。そこで面会交流をめぐっては、11年の民法改正(昨年4月施行)により、離婚後の子どもの監護に関して協議で定めるべき事項として「面会交流」と「養育費の分担」が明記。離婚届にも、両事項を取り決めたかどうかの確認欄が新たに設けられた。ただ、未記入でも受理されるため「実効性に乏しい」との声があり、実際に歯止めにはなっていないようだ。

 今月2日、福岡市で「親の離婚・切れない親子の絆」と題したセミナーが開かれた。家裁の元調査官らでつくる社団法人「家庭問題情報センター 福岡ファミリー相談室」の主催。「夫婦の別れを親子の別れにしてはいけない」として、そのための方策や心構えを考える内容だった。

 同相談室は1992年に設立。2008年からは、面会交流で当事者間の調整をする援助事業にも取り組んできた。やはり年々、相談件数は増えているという。相談員で福岡県立大学名誉教授の宮崎昭夫さんは「別れた夫婦が連絡を取り合うことは難しく、面会交流を当事者に任せきりにしてもうまくいかないケースが少なくない」と指摘する。

 しかし、公的機関による援助は東京都など一部でしか実践されておらず、民間機関も援助の手が足りないのが実情という。宮崎さんは「自分は親から愛されているのだ、と子どもが実感できる社会の仕組みを、早急に整える必要がある」と提言していた。

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 ●面会交流

 面会交流とは、離婚後や別居中に、子どもと一緒に暮らしていない方の親が子どもと会ったり、電話や手紙などで定期的、継続的に交流すること。回数や頻度など具体的内容は、親同士で協議して決められない場合、家庭裁判所に調停を申し立てることができる。調停委員が間に入って話し合い、子どもの気持ちを尊重しながら取り決める。

 調停が成立しなければ、裁判官による審判手続きが開始される。調停や審判で決定した内容が守られない場合は、家裁に履行勧告を申し立てることができる。それでも会わせない場合は、金銭の支払いや差し押さえを伴う間接強制命令が出されることもある。子どもを連れ出して会わせる直接強制命令はできない。

=2013/02/09付 西日本新聞朝刊=

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