【こんにちは!あかちゃん 第3部】私は産めますか?<6完>正しい知識を広めよう

フリーペーパーの創刊に向けて原稿を執筆する永山佳代さん
フリーペーパーの創刊に向けて原稿を執筆する永山佳代さん
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 《いつかは子どもが欲しいと考えながら、あまりに知識がなかったこと、自分の体を大事にしてこなかったことを、この連載を担当して痛感した。私(31)と同じように思っている女性が多いことも分かった。どうすれば、そんな状況を変えられるのだろう》

 一連の取材で最初にお話を伺った主婦(28)も、自分の無知を悔いていた。

 中高時代、雑誌モデルに憧れて過剰なダイエットとリバウンドを繰り返した。何度も生理が止まったが悪いこととは思わず、むしろ「楽でいいや」と考えていた。2年前に不妊治療を始め、順調な生理がいかに大切かを思い知った。「正しい知識を持っていれば、こんなにつらい思いをしなくて済んだのかな」。時々、そんなふうに涙を流す。

 「間違った認識を持っている人があまりに多い」。岡山大学大学院保健学研究科教授の中塚幹也さん(51)はそう嘆く。昨年、岡山県内の医療系学部に通う大学生429人を対象に調査したところ、妊娠・出産に関する知識の低さが明らかになったからだ。

 女性の妊娠率が低下し始める年齢を「40歳以降」と回答した学生は51・7%。生殖補助医療なしで自然に妊娠できる年齢として「45歳以上」を選んだのは30・9%に上った。正解は「35歳を過ぎると妊娠しにくくなり、自然妊娠できるのは45歳くらいまで」。

 こうした誤解を生む一因として、中塚さんは性教育の在り方を挙げ「避妊や性感染症の予防に関する知識に偏っており、加齢と妊娠の関係を学ぶ機会が少ない」と指摘する。

 国の学習指導要領では、小中高で妊娠しやすい年齢や不妊治療について教える規定はない。文部科学省学校健康教育課は「個人差が大きいため配慮が必要で、どのように教えるかは難しい」と説明する。

 新たな試みもある。鹿児島県助産師会は、3年前から中高生向けの性教育の出前授業で「生殖年齢には限りがある」と伝えるようにした。不妊治療中の患者などから寄せられた声を受けてプログラムを変更したという。理事の山之口千佳さん(47)は「ライフステージの設計を考える上で重要なこと。もっと早く盛り込むべきでした」と話す。

 「学校任せにせず、家庭でもきちんと教えることが大切」と訴えるのは、福岡市の不妊治療専門クリニックに勤める助産師、石澤勤子さん(51)。男女の体の違いや避妊の知識、妊娠の適齢期…。「いやらしいことでも何でもない。恥ずかしがったり隠したりせず、子どもの発達段階に応じて伝えて」と力を込める。

 「ラ・シゴーニュ」。フランス語でコウノトリを意味するフリーペーパーが4月、福岡市で創刊される。編集長の永山佳代さん(46)は「これから妊娠、出産を考えている女性たちに正しい知識を伝え、不妊をもっと身近に考えてほしい」と狙いを語る。

 創刊のきっかけは、永山さんの周囲に不妊に悩む人がたくさんいたこと、そのほとんどが治療を始めてから「もっと早く知っていれば」と後悔していることだった。自身も、仕事を優先して妊娠を先延ばしにしてきた。41歳で第1子を出産後、2人目を望んで治療を始めたが「年齢の壁」を前に高度な治療へ進むのを諦めざるを得なかった。

 「ラ・シゴーニュ」は隔月で発行し、妊娠の基礎知識や不妊治療体験者の声などを掲載していく。「今、不妊かもしれないと悩んでいる人だけでなく、まったく関心がなかった層にも読んでもらいたい」。6月号からは一般女性が手に取れるよう、オフィスや公共施設でも配布する計画だ。

 《この連載は「早く産んだ方がいい」というメッセージではない。さまざまな理由や事情で赤ちゃんを望まない、望めない人もいるだろう。ただ「知らなかった」という後悔だけはしてほしくない。

 そして男性も、既に出産を終えた人も、知ってほしいし考えてほしい。出産や不妊は女性の問題、個人の問題だから自分には関係ないでは済まされない。女性の労働力を求める一方で、働きながら産み育てやすい環境をつくってこなかった背景があるのだから。

 社会が変わらなければ、いくら正しい知識があっても「産む」という選択はしづらい。家庭で、会社で、地域で、それぞれの立場でできることがきっとあるはず。一緒にその一歩を探していきませんか》
 =おわり

 ◇電話相談の日程変更 7日付で掲載した不妊体験者を支援するNPO法人Fineによる無料電話相談の日程が「13日と23日」から「13日と28日」に変更になりました。


=2013/03/13付 西日本新聞朝刊=

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