【おなかの命は…出生前診断】<5>先輩 障害児の親に寄り添い

 ■こんにちは!あかちゃん 第4部■

 別の病室から聞こえる元気な産声や赤ちゃんの泣き声が、つらかった。佐賀市の坂田利加子さん(38)は、ダウン症の長男(8)が生まれた当時をそう振り返る。

 長男は心臓や腸に合併症があり、生まれた日に産院から別の大規模病院に搬送された。利加子さんは産院に1人残されたが、泣くしかなかった。

 「この子の障害を受け入れてくれるだろうか…」。友人に長男を紹介するのをためらったり、外見で周囲から差別されはしないかと悩んだりもした。

 それでも前向きになれたのは、同じ境遇の親たちとの出会いがあったから。長男が合併症の手術を受けた福岡市の市立こども病院には、わが子の心臓移植を待つ母親、病気が原因で離婚したという母親もいた。「子どもを育てるなら、強くならなくちゃ」と励まされ、笑えるようになった。

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 出生前診断の主な対象とされるダウン症を含め、障害や病気のある赤ちゃんを迎えた家族の悩みは深い。

 そんな家族の大きな支えとなるのが、同じ経験をした「先輩家族」だ。福岡市で活動する「ダウン症等受容支援ネットワーク福岡」は、先輩家族を中心に小児科医や産婦人科医など専門家も加わって1999年に結成された。障害児が生まれた家族に対して、障害のある子を育てる親が悩みを聞く活動を続けている。いわゆるピアサポートだ。

 現在、先輩家族は8人。障害のある赤ちゃんが入院する病院から連絡を受け、先輩家族の男女2~3人で訪問。赤ちゃんの父母の不安を聞き、必要に応じて助言もする。

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 先輩家族の一人、荒尾加奈さん(48)はダウン症の長女(14)を育てている。「医療者からはなかなか聞けない子どもの育ちや生活情報などを伝えたい」と話す。

 障害児を迎えたばかりの夫婦からよく聞かれるのが「友人や親戚、きょうだい児にどう伝えるか」。驚かれたり同情されたりといった反応が怖くて、初めはわが子の障害を隠す人は少なくない。自身も同じ思いをした。だから気持ちはよく分かる。「それでも一歩を踏み出せば楽になります。周知は早い方がいい」とアドバイスしている。

 聞き手に徹するが、必ず伝えることがある。「ダウン症の子はおとなしく見られがち。親が放っておかず、積極的にスキンシップや声掛けをしてあげてほしい」ということだ。夫婦だけで抱え込まないで、両親など家族の理解を得て助けてもらい、夫婦が頑張りすぎないことも大事という。

 相談の途中で泣きだす人もいる。「不安なのはみんな同じ。思いっきり泣いていいんですよ」。荒尾さんはそう言って、寄り添う。

=2013/04/19付 西日本新聞朝刊=

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