【生きる 働く 第8部】どうなる「不本意派遣」<1>正社員 本当になれる?

福岡県外からも事業者が参加した福岡労働局の説明会=28日、福岡市・天神
福岡県外からも事業者が参加した福岡労働局の説明会=28日、福岡市・天神
写真を見る
写真を見る

 11日に成立し、30日に施行される改正労働者派遣法。準備期間の異例の短さに誰もが戸惑っていた。「何がどう変わり、自分の会社にいつから影響するのかよく分からない」

 福岡労働局が28日、福岡市で初めて開いた説明会は、派遣会社(派遣元)や派遣労働者の受け入れ会社(派遣先)の約500人であふれかえった。「今日は説明だけ。質問は10月2日以降にお願いします」。労働局の言葉に、出席者は困惑の表情を浮かべた。

 改正は派遣のあり方を大きく変える可能性があるが、細かなルールが明らかにならないままスタートしようとしている。

 派遣労働が国内で始まって来年で30年。派遣は柔軟な働き方ができる一方、非正規労働者の受け皿にもなっている。

 厚生労働省の2012年調査では、派遣労働者の43・1%が自ら派遣を希望。正社員になりたいのになれない「不本意派遣」は43・2%に上った。

 福岡市のハルコさん(36)は広告代理店で働きたくて派遣を選んだ。「大手は(四年制大学の)新卒しか採用しない。派遣なら短大出身でも希望する企業に入りやすい」。職場の正社員が残業漬けの中、ハルコさんは定時退社し転勤もない。趣味を生かし、副業として料理講師を始めることができた。

 「派遣会社が仕事を紹介してくれるので就職活動をしなくていい」(50代女性)▽「パートより高い時給をもらえる」(30代男性)▽「子育て中で決まった時間だけ働ける」(30代女性)などのメリットもある。

 九州北部のコールセンターで働くサユリさん(54)は不本意派遣の一人。勤務先が廃業して以来15年ほど、販売員などの派遣を続けてきた。数カ月ごとの契約更新で、1カ所は長くて2年。「いつ首を切られるか分からない」。年収が上がったことはない。業務上の不備を指摘して更新を見送られたこともあり、立場の弱さを実感している。

 休日が多いとすぐ月収に響く。先週のシルバーウイークもパートを掛け持ちした。病気で手術が必要と言われているが、仕事を失いそうで踏み切れない。「正社員なら有給や傷病手当金が当たり前に使えるのに」

 そもそも派遣は他の非正規雇用とどう違うのか。

 正社員やパート、契約社員は企業などに直接雇用されるのに対し、派遣は派遣元が雇い主の「間接雇用」。数カ月から1年程度の契約更新を繰り返し、同じ職場で働けるのは上限3年(現在は一部業務を除く)だ。

 間接雇用は労働者保護の責任があいまいになりやすく、戦後は直接雇用が原則とされてきた。ただ、企業側にとっては人件費を抑えられ、人員調整もしやすい便利な存在で、経済界などは規制緩和を求めてきた。国は1986年の労働者派遣法施行で、通訳など専門性の高い13業種に限って解禁し、99年に原則自由化した。今回の改正で、企業は人を入れ替えればずっと派遣を利用できるようになる。派遣会社は全て国の許可制となり、働き手のための「雇用安定措置」などが義務付けられた。

 安倍晋三首相は「正社員への道を開く」と改正の意義を強調したが、サユリさんは信じられない。「派遣は安くてすむし、クビにするのも派遣会社に一言伝えるだけ。正社員を増やす企業なんて本当にあるのでしょうか」 (文中仮名)

    ◇    ◇

 改正労働者派遣法が明日、施行される。「不本意派遣」の労働者にとって、希望の持てる制度見直しなのか。改正ポイントを点検し展望する。


=2015/09/29付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]