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【和食力】しょうゆ 広がる用途 福岡市の福萬醤油 スイーツ用やスプレー式販売

かつての看板を飾った店舗で幅広い商品をPRする大浜大地社長
かつての看板を飾った店舗で幅広い商品をPRする大浜大地社長
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 「サラダやあえものにどうぞ」「塩分0%仕込み〓(〓はハートマーク)」「だしのちがいをお楽しみください」

 書店さながらのカラフルなポップ広告が目を引く。しょうゆ店らしからぬにぎやかさだ。「しょうゆで食卓を楽しく華やかに」。創業1821年、福萬醤油(ふくまんしょうゆ)(福岡市中央区)の7代目社長、大浜大地さん(34)が抱くイメージをそのまま表現したような店だ。

 扱うのは主に九州・山口の約300種類。定番になった感のある卵かけご飯用は昆布などだしの異なる6種類がある。サーモンやチーズにぴったりのスモーク風味、スイーツ用、豆腐に合う酢入りなど大浜さん自らブレンドした品も並ぶ。

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 店舗は同市・天神の親富孝通りに近い。江戸末期の創業時代、一帯は海岸だったという。社名の由来である地名「萬(よろず)(万)町」は黒田長政公の命名と伝わる。醸造所を含め広い敷地を有した同社は区画整理などのため1960年代に休業した。

 大浜社長はもともとオリーブ油の輸入販売などの会社を経営。事務所の家主が創業家の家族だったことなどが縁で7代目を継ぐことになった。米ニューヨークの和食店で高校時代にアルバイトしたとき、わさびが日本独自のスパイスとして人気だったことに「食文化を伝える面白さと誇り」を感じ、興味を抱き続けていたという。

 同社は2009年、再興した。店舗には、古くから引き継がれ半世紀保管されていた看板や家具などを置いた。商品も見直した。ラベルのデザインを刷新し、容器は3カ月ほどで使い切る小さいサイズに変えた。顧客の要望に応えて高血圧予防などの健康面も考慮した。使い過ぎによる塩分取り過ぎを防ぐワンプッシュ0・1ミリリットルのスプレー容器は、塩分による詰まりや腐食を避ける工夫を重ね、開発に2年以上を費やした。

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 店舗の奥に漆塗りのすき戸を隔ててテイスティングバーがある。カウンターには約200種類が並ぶ。しょうゆを楽しむランチ(980円)を目当てにサラリーマンらが来店。独自の漬けだれで作ったタイ茶漬け、こだわりの卵かけご飯、ブドウ果汁入りの専用しょうゆを垂らしたヨーグルトなどを味わった後、気に入った品を買い求めていく。

 こうじ菌、酵母菌、乳酸菌が造るしょうゆは、ワインや酒と同じ醸造物。「まず香りを確かめて、次に味見を。自分の好みに合ったしょうゆを見つけて」。そう語る大浜さんは「醤油ソムリエ」を名乗る。全国で1万2千種類を超え、「ワインより面白い」という。

 同社は今月、酸素ナノバブルを混ぜた「機能性しょうゆ」を売り出した。極めて細かい泡は1ミリリットルに1億個以上という。酸化しにくさを売りに4月売り出した窒素ナノバブルしょうゆに続く第2弾。酸素は腸から吸収され細胞を活性化し、代謝をよくするという。

 海外の食品も普通に買える現在、日本の食卓も変化している。「たとえ洋風の料理でも、安心できる和の味を手軽に加えてほしい」。和食に欠かせないしょうゆは、どんな素材にも合う万能調味料でもある。九州は、だしをブレンドする文化があり、刺し身用や「うま口」など独特の品を育んでいる。「国内だけでなく世界にも広めたい」と語る大浜さんは来年4月、スペイン・バルセロナで開かれる世界的な食の見本市に出展するつもりだ。

 伝統と革新を織り交ぜ、和食を支えるしょうゆの世界が広がる。

 ●しょうゆ輸出の歴史

 江戸時代、長崎の出島から東インド会社を通じて欧州などに輸出された。ベルサイユ宮殿を築いたルイ14世も愛用したとされる。現在、業界最大手のキッコーマンは海外5カ国・地域の7工場で26万キロリットル(2015年度末見込み)を生産、100カ国以上に輸出されているという。


=2015/10/07付 西日本新聞朝刊=

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