【和食力】自家製みそ 感動と難しさ 水分減、分解進みすぎ?

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みその表面に密着させていた紙には、水分を吸った跡が残る
みその表面に密着させていた紙には、水分を吸った跡が残る
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 仕込んで以来、108日ぶりの再会だった。ひと夏を過ごした自家製のみそ。褐色の表面はいとおしく、匂い立つ風味はかぐわしい。微生物の醸す深遠な世界をのぞいた気がした。なんて、格好つけたいところだが、世の中そんなにうまくはいかない。初挑戦のみそ造りのその後をお伝えする。

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 みそを仕込んだプラスチック食品保存容器から、ふた代わりの紙を取り、みそに密着させていた紙もはいだ。肌色だった表面は褐色に変わっている。乾いて硬くなった表面の一部をさじで削り取った。見慣れた黄土色のみそが現れる。少しパサパサして、水分が飛んでしまっているようだ。

 口に含んでみると、確かにみその味がする。こうじ菌の酵素分解、発酵・熟成が進んだ結果だ。そう考えると、何ともいえぬ感動が湧いてくる。思わず笑みがこぼれた。

 さて、気合を入れてみそ汁を作る。昆布とかつお節でだしを取り、具は冷蔵庫にあったエノキダケとシメジ、白菜。具材が煮え、みそを投入する。やはり硬い感触がある。火を止めて少しずつ溶かす。湯気とともにみそが香り立った。量もちょうどいい感じ。よし、完成。

 家族に味わってもらう。「だしは出てるけど、みそはインパクトがない。塩分が足りないような」と妻は厳しい評価だ。確かに減塩用の材料を使ったので正しいのかも。「少し甘い」という義母は「わが家は辛口だから、他の人が食べたらちょうどいいんじゃないかな」とフォローしてくれた。

 いよいよ自ら味わう番だ。口に含むと、柔らかな風味が広がった。だしのうま味と甘味だろう。肝心のみそは? んー、だしと具の味に負けているような。全体的には十分おいしいけど(負け惜しみではありません)。

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 初めてのみそ造りは、夏真っ盛りの高取保育園(福岡市早良区)主催の教室だった。塩をまぶしたこうじ、大豆を煮てつぶした粉、それに減塩用の甘酒こうじをたらいで混ぜ合わせ、大豆の煮汁を加えて粘りが出るまでひたすら練った。取材させてもらった親子から分けていただき、7月20日に自宅で仕込んだ(※8月5日付記事はこちら)。

 なぜ、水分が少なくなってしまったのだろう。味の弱さもその辺りに原因があるような気もする。

 「夏場に仕込んだから、こうじ菌酵素による分解が急に進み過ぎたのかもしれないですね」。今回の自家製みそセットを準備してくれた椛島商店(福岡県みやま市)の社長、椛島恵一さん(69)が指摘した。

 みそ造り10年の同僚は「容器の問題か、置き場所が悪かったのかも」。彼は専用のかめに仕込んでいる。

 仕込みに使った容器はダイニングのテーブルに置いていた。風通しを優先したからだが、日光が直接当たらないまでも温度が高くなったことは考えられる。確かに表面だけでなく、容器に密着していた側面も褐色になり硬くなっていた。「側面の温度が上がった結果では」と椛島さん。全体を紙で覆えば、少しは回避できたかもしれない。「生きているみそ」を相手にする難しさを思い知った。

 善後策を高取保育園に尋ねた。「みそ全体をよく混ぜ合わせてみて」と栄養士さん。この方法で経過を見守ることにしよう。

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 みそを手造りする利点がもう一つあった。

 気合を入れたみそ汁の味見をしながら、どんな見出しにしようかと考えていると、子どもたちが次々に帰宅した。中2の娘は「いつもと違う。ご飯が入りそう。朝、食べるといいかも。めっちゃおいしい」とべた褒め。にんまりしていると、高2の息子は「昆布とかつお節の味がする。まずくはない。けど、みその味はあんまり、せん(しない)」。

 「2人とも気を使って大変やね。見出しは『味のないみそ』にしたら」という妻の言葉にへこんだ。

 ということで今回は、自家製みそを造ると家族の会話も弾むという話でもありました。


=2015/11/11付 西日本新聞朝刊=

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