【和食力】おでん だしと具材の調和 うま味、風味 和の「原点」

 温かい鍋物が恋しい季節になった。1番人気はおでんという。大根、卵、ちくわ、牛すじ…。だしを吸った具を頬張れば寒さも忘れそうだ。味の決め手は「だし」。世代を超えて愛されるおいしさの理由は、和食の原点ともいえる、だしのうま味にある。

 好きな鍋料理、昨年の秋冬に食べた鍋料理の1位はいずれもおでん-。「紀文食品」(東京)の「鍋白書2015」によると、福岡県や東京都など7都道府県の主婦1400人を対象にした調査で、こんな結果が出た。

 昨年秋冬に食べた鍋料理では、おでんが71・5%で、2位すき焼き(54・9%)、3位寄せ鍋(51・9%)を20ポイント近く引き離し、16年連続でトップ。地域別、年代別でも1位となった。

 好きな鍋料理でもおでんは64・7%で1位。2位すき焼き60・7%、3位しゃぶしゃぶ59・2%、4位キムチ鍋53・1%などを抑えた。

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 おでんは、うま味豊かな「だし」で練り物や野菜などの「具材」を煮込む料理。「具材が個性を失わず、それぞれの味と食感を楽しめるのが魅力」。そう語るのは龍谷大の伏木亨教授(食品・栄養学)。和食文化の保護・継承に取り組む和食文化国民会議(略称・和食会議)の会長代行を務める。

 重要なのは「だしと具材が醸し出す独特の風味」。嗅覚は味覚よりもはるかに解像度が高く、その記憶は長い年月を経ても変わらないという。伏木教授は「嗜好(しこう)は幼いころの記憶の影響が大きく、10歳ぐらいまでに、だしの味と香りに親しむことで和食好きになる」と指摘する。おでんで味わう和食ならではのおいしさは脳に刻み込まれ、大人になっても忘れない。その意味で、だしを堪能するおでんはシンプルな料理ながら、和食文化の継承にとって必須のメニューといえないだろうか。

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 白書では、だしから作るおでんを日本料理店「つきぢ田村」(東京)3代目の田村隆さんが紹介している。

 おいしいだしを引き出すには、前もって昆布や削り節を鍋に入れておくことが大切。乾物は短時間では芯まで戻らない。一晩寝かせることで素材本来のうま味を取り戻すためだ。

 しっかり煮出しただしは、最初の味見では「薄いかな」と感じるぐらいにするのがこつ。具材のうま味が補ってくれるからだ。もし味が足りないと思ったら、しょうゆを少し垂らせばよい。

 余計な手間をかけないような注意もいる。揚げ物の油抜きはよく聞くが、油にこそうま味が含まれている。よい油は味に深みを与えてくれるという。

 具材を煮込むのは20分程度。煮すぎるとうま味が抜けてしまう。冷める過程でだしが具材に染み込むので、時間があるときに作って、食べる前に温め直すと味のバランスがとれたおいしいおでんが食べられる。

 〈だしから作るおでんの作り方〉

1)だし(1.5リットル)を作る

 (1)鍋に水2リットルと昆布10センチ角2枚、厚削り節40グラムを加える。軟らかくなり煮立ったら、弱火で10分
 (2)キッチンペーパーなどでこす
 (3)鍋に(2)を加え火にかけ、みりん1/2カップ、濃口しょうゆ大さじ2弱を加え味を調える

2)大根を下ゆでする

 厚さ2センチに切り、皮をむいて片面に十文字の隠し包丁を入れ、下ゆでしておく

3)おでんを煮込む

 (1)鍋に1のだし汁と具材を加えて火にかける
 (2)沸騰したら弱火で20分ほど煮込む
 (3)最後にはんぺんを入れ、汁をかけながら、はんぺんがふっくらしたら出来上がり


=2015/11/25付 西日本新聞朝刊=

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