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妊娠、育児支援切れ目なく 国、フィンランド参考に 本年度 150市町村に拠点施設

フィンランドの「育児パッケージ」の中身について説明するマリア・コッコさん
フィンランドの「育児パッケージ」の中身について説明するマリア・コッコさん
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 妊娠から出産、子育てまでを切れ目なく支援する取り組みが注目され、全国の自治体で広がり始めている。お手本になっているのは、北欧の福祉先進国フィンランドの「ネウボラ」という制度だ。どのような制度なのかを探った。

 ネウボラは、フィンランドで1920年代に始まった子育て支援拠点のことで、直訳すると「助言の場」という意味。かかりつけの保健師や助産師が、妊娠中から子どもが就学するまでを継続してサポートする仕組みだ。国内すべての市町村にあり、無料で利用できる。

 妊娠中はネウボラで妊婦健診や両親学級を受け、出産後も乳幼児健診や予防接種など、子どもが小学校に上がるまで定期的に通う。同じ担当者が育児や家庭の悩みに耳を傾け、父親やきょうだい児との面談も行う。妊婦の利用率は99・8%。家庭の状況を早期に把握し、孤立化や産後うつ、虐待の防止に役立っているという。

 夫がフィンランド大使館(東京)に勤めるマリア・コッコさん(36)は2014年10月にフィンランドで男児を出産した。妊娠中の健診は、医療チェックに加えて毎回約30分の面談があり、親になる準備はできているか、出産後の変化、食事や運動についてなどさまざまなアドバイスを受けたという。

 出産後は生後6日で保健師が自宅を訪問。産後5カ月で日本を訪れることになったときは、予防接種や離乳の時期を調整するよう助言され、不安が解消したという。日本で暮らす現在も、インターネットでネウボラのサービスを受けている。子育ては何が正解か分からず、戸惑うことばかり。コッコさんは「あなたは間違っていないよ、子どもは大丈夫、と言ってもらえることが何より心強い」と話す。

 出産に際しては、母親手当の一つとして「育児パッケージ」が贈られる。ベビーベッドにもなる箱に、衣類や哺乳びん、布団、絵本など赤ちゃんの世話に必要なグッズ約50点が詰め合わされたものだ。現金140ユーロ(約1万8千円)を受け取ることもできるが、多くの家庭が育児パッケージを選ぶという。所得制限はない。受け取るにはネウボラや医療機関の証明書が必要なため、妊婦健診への動機づけとしても効果的だ。

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 日本では妊娠中、医療機関による14回の妊婦健診があるものの、自治体が妊婦の状況を把握する機会はほとんどない。出産後4カ月以内に行う保健師らによる家庭訪問までに空白期間が生じ、支援からこぼれる例も少なくない。厚生労働省の13年度の調査結果によると、子どもの虐待死は0歳児が4割以上を占めている。

 ネウボラに詳しい吉備国際大の高橋睦子教授(福祉政策論)によると、児童虐待によって生じる社会的な経費や損失は、日本国内で少なくとも年1兆6千億円(12年度)との試算があるという。高橋教授は「虐待などを受けず健やかで安定的な幼児期を過ごした乳幼児ほど、健康リスクが低く、将来働いて税金を納められる大人になる可能性が高い」と指摘。乳幼児期に手厚いケアを行うことは、結果的にコスト減につながるという。

 国は昨年度から、ネウボラを参考にした「子育て世代包括支援センター」のモデル事業を千葉県浦安市や宮崎市など29市町村でスタート。本年度中に150市町村、5年後には全国展開を目指している。中には鹿児島県日置市のように、育児パッケージのような「マタニティーボックス」の無料配布を予定している自治体もある。

 ネウボラの特徴は利用者中心であること。高橋教授は「支援拠点を設けるだけにとどまらず、丁寧な対話を積み重ね、家族に寄り添って支援していくことが重要。各市町村の強みを生かした仕組み作りが求められる」と話している。


=2016/01/12付 西日本新聞朝刊=

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