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痰自動吸引器 介護を軽減 大分の医療機器会社販売 気管切開患者に

アモレSU1と徳永修一さん
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 病気などで呼吸機能が低下し、喉付近からの気管切開で人工呼吸器を装着する患者にとって、怖いのが気管にたまる痰(たん)だ。増えると気道がふさがり、呼吸ができなくなるからだ。このため家族らが時々、痰を取り除いてやる必要があるが負担は小さくない。この問題を解消しようと開発されたのが、医療・福祉機器メーカー「徳器技研工業」(大分県宇佐市)が製造・販売する電動式の痰吸引器「アモレSU1」。気管内の痰を24時間持続で自動的に少しずつ吸い取る能力があり、利用者に喜ばれている。

 九州北部にある住宅の一室。脳梗塞などでベッドに寝たきりの70代男性は「アモレSU1」を昨年秋から使っている。訪問診療する医師から薦められた。

 それまでは気管内に痰がたまると、人工呼吸器のアラームが鳴り、気付いた60代の妻が痰吸引装置の管を手に持って、喉付近の切開口から気管の方へと入れて除去していた。妻は「私が睡眠を取る深夜から明け方の間、アラームは3、4回は鳴っていたが、それがほとんどなくなった」と話し、「私の負担が軽くなったことよりも、夫の苦しさを軽くできていることが何よりもうれしい」と喜ぶ。男性はたまった痰で息苦しくなって目が覚めるだけでなく、妻が入れる痰吸引装置の管で、むせることもあった。

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 アモレSU1の開発の中心は、徳器技研工業社長の徳永修一さん(65)と、大分協和病院(大分市)院長の山本真さん(61)。

 日立製作所の技術者として新潟で働いていた徳永さんは、30代半ばで同社を辞めて宇佐市にUターン。全身の筋肉が徐々に動かなくなる筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者らでつくる「日本ALS協会大分県支部」が1995年にできるとき、ALS患者の兄がいる友人から「技術者として応援してほしい」と依頼され支部発足当初から参加。体の一部が触れるだけで鳴るナースコールなど、患者に役立つ機器を次々と作ってきた。

 山本さんは長年、在宅のALS患者の訪問診療に従事しており、家族が夜中も起きて吸引しなければならない「痰の問題」を何とかしたいと考えていた。

 2人は支部の活動を通じて知り合い、山本さんが徳永さんに「痰の自動吸引器を一緒に作りましょう」と提案。これを機に開発が2000年に始まり、徳永さんと山本さんは他の医師らと意見を交換しながら、試作品を何度も作るなど試行錯誤を重ね、11年に商品化にこぎつけた。

 徳永さんは「相当な時間と開発費をつぎ込んだ。山本先生と意見が食い違って口を利かなくなってしまったこともあった」と開発の苦労を振り返り「世界でも例がない機器ができた。技術者として大きな仕事を成し遂げることができ、うれしい」と話す。山本さんも「安全性と有効性を兼ね備えたものができた」と語る。

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 気管切開での人工呼吸器装着は、喉付近の切開口から気管の中に入れた医療器具「カニューレ」に人工呼吸器本体の管をつなげて実現。アモレSU1は、痰吸引路が付いたカニューレ(別のメーカーが製造)を使う。

 アモレSU1の使用には医師の管理が必要。本体は公的医療保険が適用されず価格は16万円(税別)。痰吸引路付きカニューレは同保険が適用され、患者負担は通常の3割負担だと1300円程度になる。負担軽減の仕組みもある。ただし、2週間に1回程度交換する必要があるという。

 利用者は全国各地におり、これまでに約950台が売れた。徳器技研工業=0978(33)5595。

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 痰自動吸引器については気管切開でなく経口型の人工呼吸器を使う患者向けは、九州保健福祉大(宮崎県延岡市)の竹沢真吾教授らが開発。2016年度中に医薬品医療機器総合機構(PMDA)に医療機器として承認申請する方針。


=2016/04/02付 西日本新聞朝刊=

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