介護保険改定 議論本格化へ 軽度者サービス 利用者は縮小懸念

介護保険制度の改定をめぐり、議論が交わされた公開討論会=23日、東京
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 厚生労働省の社会保障審議会の部会で、介護保険制度を見直す議論が進められている。大きな焦点となっているのが、要介護度が低い軽度者向けのサービスの見直しだ。年内の意見取りまとめに向け、今後議論が本格化する。膨らみ続ける介護費を抑制する狙いだが、当事者や家族、事業者からは悲鳴が上がっている。

 「制度が見直され、私が介護を担うなら、離職するしかなくなってしまう」。東京都西東京市で介護事業所を運営する野方規子さん(60)は途方に暮れる。

 熊本市で1人暮らしする義母(87)は認知症があり、「要介護1」。野方さんが仕事の合間を縫って帰省できるのは月1回ほど。義母の暮らしは、週6回のデイサービス(通所介護)と、週3回の掃除や買い物、洗濯などの生活援助サービスで支えられている。限度額を超えた分は、自費で賄っている。

 洗濯機の使い方は分からないが、自分で干すのは可能。買い物はできないが、冷蔵庫にあればトーストと牛乳の朝食も取れる。「今はホームヘルパーさんが日常の要」と野方さん。熊本地震後、東京に連れてくることも考えたが、「住み慣れた家で暮らしたい」という義母の願いを可能な限りかなえたい。

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 財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は昨年6月、7段階に分かれる要介護度のうち、軽度者(要支援1~2、要介護1~2の4段階)の生活援助サービス、福祉用具貸与、住宅改修について「原則自己負担(一部補助)の仕組みに切り替えるべきだ」と提案した。政府の経済財政諮問会議は昨年12月、2016年末までの結論を求めた。

 背景にあるのが、高齢化による介護費の急増だ。介護保険制度が始まった00年度は約3・6兆円だったが、15年度は10兆円を突破した。「団塊の世代」が全て75歳以上になる25年度には、約20兆円になると試算される。介護人材の不足も指摘され、25年には約38万人が足りなくなる見込みだ。

 財務省案で対象となる軽度者は、介護保険制度利用者全体の約65%を占めており、制度見直しによる影響は大きい。部会でも「軽度者外しは重症化を招く」といった声が上がる。

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 23日、東京都内で開かれた公開討論会「どうする!介護保険制度の大改定」。登壇した兵庫県西宮市の板倉佳代さん(76)は「少ない年金生活で、全額負担はあまりに厳しい」と訴えた。08年に左足をなくし、要介護度は「要支援2」。1人暮らしで、電動車椅子と昇降機2台をレンタルし、週2回の生活援助サービスを使う。

 現在、自己負担は1割のため、月のサービス料は1万円程度。全額負担となれば、生活が成り立たなくなる。「友人とお茶をしたり、買い物したり…。車椅子がなければ、家に閉じこもるしかない。生きる楽しみを奪わないでほしい」と力を込めた。

 日本福祉用具供給協会(東京)の本村光節専務理事は、昨年12月に福祉用具を利用する軽度者に実施した調査の結果を説明。制度の見直しで福祉用具の利用が制限された場合、「ヘルパーへの切り替えが増え、介護保険給付額が現在より年間約1370億円、介護人材の需要が10万人以上増える」との試算を示した。

 東京都介護支援専門員研究協議会の小島操副理事長は「制度の理念である『介護の社会化』とは逆行する動き。声を上げていかなければ」と力を込めた。


=2016/06/30付 西日本新聞朝刊=

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