【生きる働く】非正規単身女性 経済的に不安 福岡女子大・野依教授ら調査 「社会的支援が必要」

非正規雇用の単身女性が抱える問題を調査した野依智子さん
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 非正規雇用の単身女性はどんな社会的支援を必要としているのか。福岡女子大副学長の野依智子教授(ジェンダー学)らが昨年10月に行ったアンケートで、「要支援者」として認識されず、雇い止めや解雇への不安を抱え、低収入に悩む姿が浮かび上がった。

 調査は昨年10月、横浜市男女共同参画推進協会、大阪市男女共同参画のまち創生協会と合同で、インターネットで実施した。非正規雇用の単身女性の中でも、各種統計で貧困状態にある人の割合が高い35~54歳を対象とし、首都、近畿、九州圏の261人が回答した。

 回答者のうち、正規雇用で働きたいのに仕事がない「不本意非正規」は61・7%に上った。年収250万円未満が68・2%を占め、雇用契約期間は1年未満が4割超、1~3年未満が3割で、不安定な状況が明らかになった。

 仕事に関する悩み(複数回答)は、「収入が少ない」が82・4%、雇い止めや解雇など「雇用継続の不安」が59・4%。「教育・研修がない」(21・8%)ため正社員に比べキャリアアップの機会がなく、「パワーハラスメント」(15・7%)など、立場の弱さをうかがわせる回答もあった。

 今後利用したいサポート(複数回答)は、「仕事に必要なスキルアップの場」や「職業訓練・資格取得支援」に加え、「同じ立場の人たちとの交流の場」など悩みを語り合う機会を求める声が多かった=図。

 回答者のグループインタビューでは、非正規雇用で単身かつ女性であるが故、親の介護を周囲から期待され、離職に至る傾向も見られた。

 野依さんは、「かつての『男性稼ぎ主』モデルは崩壊したのに、女性は『家計補助的労働』のままの低い賃金体系で、それを強化する性別役割分業の規範も残っている」と分析。女性の非正規雇用に対し「子育てなどのため自ら希望している」という先入観が社会全体で根強いため、「稼ぎ主」である非正規単身女性の存在そのものが見落とされ、無職者やシングルマザーに比べて社会的支援も乏しいと指摘した。

 調査をまとめた報告書では、今後必要な支援として、非正規雇用の待遇改善や結婚・出産をしていない女性への偏見をなくす「社会の風潮や制度の改革」▽収入を増やすための「具体的なサポートプログラム」▽「同じ立場の人のつながり」-の三つを挙げ、所得や資産に応じた公平な税制、社会保障の実現などを提言した。

 報告書は、両協会のウェブサイトで「非正規職シングル女性の社会的支援に向けたニーズ調査報告書」として公表している。

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 野依さんによる調査結果報告会が9日、福岡市南区高宮3丁目の市男女共同参画推進センター・アミカスで開かれる。午後1時半から基調報告、同2時40分から意見交換会。参加費無料。定員40人で先着順。

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 【ワードBOX】非正規雇用

 厚生労働省などの2015年の調査では、正規雇用の賃金を100とすると、非正規雇用は63.9で大きな格差があった。非正規労働者は過去20年間で倍増し、労働者全体の4割近い約1980万人に上る。そのうち7割近くを女性が占めている。国立社会保障・人口問題研究所が10年の所得を分析したところ、20~64歳の単身女性の3人に1人が「貧困状態」にあった。

 一方で生涯未婚率(50歳時点で結婚経験のない人の割合)は10年時点で、女性が1割、男性が2割を超えている。単身で暮らす非正規労働者の経済的不安は今後、男女を問わず広がっていきそうだ。


=2016/07/02付 西日本新聞朝刊=

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