捨て猫の涙 殺処分 年8万匹の現実 不妊・去勢の普及を ボランティアに聞く

不妊・去勢手術を受けた猫たち。手術済みの印として耳先をV字にカットする(福岡市家庭動物啓発センター提供)
不妊・去勢手術を受けた猫たち。手術済みの印として耳先をV字にカットする(福岡市家庭動物啓発センター提供)
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 路上で車にひかれた猫の死体を見掛けたことがある方は多いはず。福岡市では年間に約7千匹の死体が回収されており、大半は捨て猫が生んだ子猫という。哀れだからと餌をやるだけでは、ふん尿やごみあさりが住民の苦情を招き、引き取り手がなければ殺処分される無残な循環が繰り返されている。そんな哀れな命をどう守るかに取り組むボランティアの人々がいる。同市の家庭動物啓発センター(西区内浜1丁目)が毎月第3日曜日に開く「犬猫よろず相談」で現状を聞いた。

 2014年度に全国で殺処分された猫は約8万匹。同市でも08年度まで年2700匹を超える数が殺処分されていたが、飼い主にはペットが死ぬまで飼う責任があることを啓発する活動に力を注ぎ、受け入れはやむを得ない場合に限っている。このため、ここ数年は500匹を下回っているが、猫を捨てる行為がなかなか減らないのは、冒頭の死体の回収数が示す通りだ。

 「その死に方も、かわいそうな例が多いんです。親がいない子猫は交通事故に遭いやすいだけでなく、カラスにも襲われるんです」
 そう話すのは相談員を務めるボランティア団体「TNR博多ねこ」代表の木本美香さん(54)。TNRは「猫をわなで捕まえて不妊手術を施し元の場所に戻す」(トラップ・ニューター・リターン)という活動を表す英略語だ。

 木本さんは「息子が拾った猫を育てるうちに動物愛の心に火が付いて、殺処分される猫を減らそうと活動を始めました」。会社勤めの傍ら、飼い主探しや室内飼育の指導、そして野良猫を増やさないため獣医師と連携し不妊・去勢手術の普及に努めている。わなは猫を傷つけないよう餌を入れた籠を使う。

 「野良猫は食べ物が良くなったこともあって寿命が15~20年に延び、その間に年2~3回、一度に4~5匹も出産するんです。その子猫たちの不幸を考えれば、地域で不妊と去勢に取り組むのが大事なんです」

 トリマーの山口みわ子さん(38)も野良猫問題に取り組む「ライフ・リレー・ネットワーク」の代表だ。同市中央区の大濠公園や西公園にすみ着く猫を、管理事務所など地元の人々と連携して「地域ねこ」として管理、保護している。これまでに100匹近く手術を受けさせたが「捕獲作業を始めて4年たった今も、問題はなかなか解決しなくて」と話す。

 猫の餌は量を管理しなければ余った分が腐って悪臭を放つし、よその猫やカラスを集めてしまう。外部の人のルールを守らない餌やりは取り組みを損ないかねない。「猫の問題は、結局は人と人との信頼の問題なんです」

 不妊・去勢事業の支援には、各地の自治体や県獣医師会も取り組んでいる。

 ●「共に生きよう」啓発イベント 福岡市で10月

 福岡県獣医師会は野良猫の繁殖を防ぎ、殺処分される猫を減らそうと2010年に「あすなろ猫事業」を始め、これまで約3100匹に不妊、去勢手術を行ってきた。だが、捨てられるなどして命を全うできない猫は後を絶たない。

 同会いのちをつなぐ委員会の中岡典子委員長は「猫ブームの今だからこそ、こうした現状を知ってもらいたい」と10月22、23日午前10時~午後5時、福岡市・天神のパサージュ広場で啓発イベント「共に生きようプロジェクト」を開く。

 啓発パネル展示や保護猫の譲渡活動紹介、獣医師による飼育・健康相談、行政書士のペット信託紹介コーナーのほか、写真集「うちの猫ら」(オークラ出版)で知られる吉松文男さん=大分県別府市出身=の写真展、猫グッズの販売、音楽ステージなどもある。参加無料。同会=092(751)4749。


=2016/09/29付 西日本新聞朝刊=

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