【君(ペット)がいるから】<14>飼い主には厳しい覚悟を

子猫が幸せに育つかどうかは、飼い主の覚悟次第
子猫が幸せに育つかどうかは、飼い主の覚悟次第
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 春と秋は猫の出産ラッシュの季節です。その時季を痛感するのが「捨て猫」の増加です。

 朝、竜之介動物病院(熊本市中央区)の入り口に置いてある不審な段ボール箱。私たちが最も落胆する光景です。中には生まれて間もない子猫、どうかすれば親猫も一緒に捨てられているのです。やるせない気持ちになります。

 私の病院では開業当初から、行き場をなくした動物たちの飼い主探しをしています。新しい家族の元で幸せな生涯を送ってほしいと、懸命に来院者に声を掛け、今まで数え切れない犬や猫を新しい飼い主に託してきました。

 ところが、ある時ふと「自分たちがしていることは、本当に動物の幸せになっているんだろうか」と、疑問を感じたのです。飼い主を探す私たちは必死でした。「飼ってもいい」と言う人のため、予防接種をし、ペットフードも一緒に託す。経済的不安を訴える人には、子犬や子猫が増えないよう不妊手術も施しました。

 このように、丁重に「もらっていただいた」はずなのに、数日後、「突然いなくなっちゃいましたんで、別の猫、もらえませんか?」などと、軽い調子で電話がかかってくることも少なくありませんでした。予防接種の予約をしたはずなのに予約の日時に現れない。不妊手術の時期になっても、手術を受けに訪れないということもよくありました。

 そんな人が増えたことで、適正に飼育されている可能性が極めて低い現実に気付いたのです。「もらわれた先で幸せになっていないかもしれない」という思いが、捨て猫の委託方法を転換するきっかけになりました。

 「もらっていただく」方針を変えたのです。捨て猫や捨て犬の飼育を希望する人から、一律に料金をもらうことにしました。簡単にいえば、買っていただくことに決めたのです。最初は抵抗がありました。「捨て猫にどうしてお金がいるのか」「そうまでして金もうけしたいのか」などとやゆする人もいました。それでも方針は変えませんでした。

 この方針は見事に的中しました。予防接種から定期健診、不妊相談まで、ほとんどの飼い主が定期的に病院を訪れるようになりました。「お金を払った」という事実が、結果的に捨て猫や捨て犬の命の質を引き上げたのです。

 「お金なんかで…」と思わないでください。ペットの健康管理にお金を支払ったり、餌や首輪など飼育に必要な物を買ったりしているうちに、「この子のために何かをしたい」という愛情や責任が育っていくのです。小さな命を守り育てていくために必要なことは数多くあり、そのための飼い主の覚悟は厳しいものなのです。

(竜之介動物病院長、熊本市)


※この記事は2016/11/03付の西日本新聞朝刊(生活面)に掲載されました。

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