奨学金は「借金」でもある 返済見通し立てて検討を 大学生の5割利用、自己破産も

写真を見る

 大学などへの進学とともに、奨学金の利用を検討する人も多いだろう。だが無事に卒業しても返還が滞り、将来的に住宅ローンを組めなくなったり、自己破産に陥ったりするケースもある。借りる前に一度、返すときのリスクも考えてみませんか。

 「『みんな借りるから』と気軽に考える人もいますが、奨学金は子ども名義の借金。社会に出る時点でマイナスからのスタートになることを、親はきちんと説明してほしい」。福岡市のファイナンシャルプランナー江崎智代さん(43)は訴える。

 日本学生支援機構によると、大学生の5割は奨学金を利用しており、ほとんどは貸与型。1人当たり平均貸与金額は有利子タイプで343万円、無利子タイプで236万円に上る。

 返還は卒業の半年後から始まる。今月まで計343万円を借りた場合、利子を含めた返還額は約355万円。20年間で返すには毎月1万5千円弱を支払い続ける必要がある。

 厚生労働省の昨年の調査によると、大卒者の平均初任給は20万3400円で、税金や社会保険料を引かれると手取りは17万円前後。毎月の返済は結構な重荷になる。

 さらに大卒の3割以上は新卒採用から3年以内に離職しているという調査結果もある。再就職では、より低賃金の非正規雇用となる例も少なくない。

    ◆    ◆

 こうした状況を背景に、奨学金を返せない人が増えている。

 支援機構は、経済状況が悪化した人などに対し、返還金の減額や期限を猶予する制度を設けており、2015年度の届け出は16万6千件以上。届け出をしていない延滞者も32万7千人を超えている。

 延滞者には年率5%の延滞金を課すなど、回収を強化してもいる。3カ月以上支払いが滞ると、個人信用情報機関のいわゆる「ブラックリスト」に登録され、全額返しても5年間は解除されない。クレジットカードが使えなくなったり、新たなローンを組めなくなったりすることもある。

 「延滞していなくても、収入に対し返還額が多く住宅ローン審査が通らない例や、夫婦2人とも返還中で子どもの教育費を貯蓄できない“負の連鎖”も見かけます」と江崎さんは話す。

 支援機構の調査では未返還のまま自己破産したケースが、15年度末時点で約1万1600件に上った。

    ◆    ◆

 国は、今後さらに国立大の授業料が上がる見通しを示している。江崎さんは「進学を考えるなら子どもが生まれた直後から貯蓄を」と呼びかける。

 学資保険なら教育資金を積み立てやすく、預貯金より高い利回りが期待できる。「児童手当をもらえなかったものとして積み立てても、中学卒業までに200万円余りになります」。習い事を減らして貯蓄に回すことも、子どもの可能性を広げる選択肢になるという。

 また、進学前に「本当に大学で学ぶ必要があるのか、本人の意思を確かめるのも大切」と話す。その上で進学先の授業料減免制度や、市町村や民間団体などによる給付型奨学金がないか調べてみる。必要最小限の金額を借りる。返還をシミュレーションする。

 「教育は未来への投資。だからこそ、お金の問題で進学を諦めないですむよう計画が重要です。子どもも一緒に考えることで、学ぶ姿勢も変わってくるのではないでしょうか」

 ▼国の奨学金 日本学生支援機構が大学や短大などで学ぶ人に貸与し、無利子の第1種、有利子の第2種がある。2015年度は134万人に貸与した。17年度には、卒業後の所得に応じ、返還月額が最低2000円となる所得連動返還型が始まる。低所得の進学者を対象に、返還不要の給付型も一部で先行導入される。


=2017/03/17付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]