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【こんにちは!あかちゃん 第8部】「産後うつ」と向き合う<3>経験者がサポート模索

「実体験を知ってもらう場を増やしたい」と話すママブルーネットワーク代表の宮崎弘美さん
「実体験を知ってもらう場を増やしたい」と話すママブルーネットワーク代表の宮崎弘美さん
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「国によるケアが当たり前になってほしい」と話すマドレボニータ理事の吉田紫磨子さん
「国によるケアが当たり前になってほしい」と話すマドレボニータ理事の吉田紫磨子さん
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マドレボニータが主催する教室でバランスボールを使って有酸素運動に取り組む母親
マドレボニータが主催する教室でバランスボールを使って有酸素運動に取り組む母親
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 東日本大震災から丸2年の今春、連載1回目で登場したスクールカウンセラーの宮崎弘美さん(45)に、福島市内のホテルで初めてお会いした。長崎市に移り住む直前のこと。東北から遠く離れた九州で彼女の存在を知ったのは、インターネットを通してだった。

 宮崎さんは2004年、産後うつの女性と家族を支援する団体「ママブルーネットワーク」のサイトを開設した。自身も産後うつを発症し、自殺を考えたこともある。治療と家族の支えによって「薄皮を剥ぐように」回復。そうした体験を広く発信することで「同じ思いをしている人を勇気づけられたら」と考えたからだった。

 「眠れない」「子どもに何かしてしまうんじゃないか」…。サイトには産後うつに悩む人の相談が全国各地から寄せられる。現在会員は約4800人に上り、仙台や東京など4カ所では自助グループの集いも開いている。宮崎さん自身が闘病中に「こんな情報やサービスが欲しい」と思ったことを形にしてきた。

 それでも気軽に相談できる人や病気を理解してくれる人が身近に少ない現状がある。「産後うつは本人ですら自覚しにくい病気。家族はもちろん、助産師や保健師など産後の母親と接する人にも正確な知識を持ってほしい。そのために私たちの実体験を知ってもらう場をもっと増やせれば」

 長崎市に転居した今も、東北や東京の仲間とサイトでつながりながら、支援する活動を続けている。

 赤ちゃんを抱っこしながら、8人の母親がバランスボールを使った有酸素運動に汗を流している。福岡市西区のスタジオ。東京のNPO法人「マドレボニータ」が主催する「産後のボディケア&フィットネス教室」が開かれていた。

 マドレボニータは、産後の健康の回復と増進を目的とした独自プログラムに取り組み、全国約50カ所に教室を展開している。ここでも産後うつの経験者が支援活動の中心を担っている。

 理事の吉田紫磨子さん(42)=東京=はその一人。妊娠中は毎日3時間のウオーキングを欠かさないなど、食事や運動に気を使う自称「妊娠・出産オタク」だった。ところが02年に長女を産むと、体のあちこちが痛み、授乳で夜眠れなくなった。3カ月後、動けずに布団から出られなくなり、嘔吐(おうと)する。病院を探そうと電話帳を手にすると、持ち上げられなかった。

 「体が悲鳴を上げている…」。産後うつは心と同時に体も疲弊する。そこでまず体を整えようと、以前から知っていたマドレボニータの教室に飛び込んだ。体の回復が心も軽くし、長女が2歳になるころ、すっかり元気を取り戻した。

 今、インストラクターとして活動している。その中で参加者から「母親の役割に追われ、自分のアイデンティティーがなくなってしまう」焦りのようなものを感じるという。それは自身も味わった感覚だった。

 家の外では「○ちゃんのママ」と呼ばれ、妻を女性ではなく母親として見る夫も少なくない。そこで教室では、参加者同士で「私」を主語に会話をすることで「自分を取り戻す」プログラムも取り入れている。

 社会から見失われる孤立感もまた、産後うつの一因ではないか‐。吉田さんは「母子手帳の交付から出産一時金までは援助があっても、国の母子保健制度に産後ケアがすっぽり抜け落ちている。うつまでならなくても出産後はみんなしんどいんです」と訴える。

 だが、産後うつや児童虐待なども防ぐ産後の心と体のケアは今のところ、民間頼りなのが実情だ。次回(9日付)は公的サポートについて考えたい。


=2013/08/08付 西日本新聞朝刊=

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