がん患者 ヨガで心身を穏やかに ゆっくり呼吸 自分のペースで ストレス軽減しQOL改善も

山田純さんが主宰するがん経験者限定クラス=長崎県諫早市
山田純さんが主宰するがん経験者限定クラス=長崎県諫早市
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九州がんセンターのヨガ教室。点滴を打ちながら参加する入院患者もいるという=福岡市南区
九州がんセンターのヨガ教室。点滴を打ちながら参加する入院患者もいるという=福岡市南区
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 がんを患った人の心身のケアにヨガを活用する試みが注目されている。がん患者の生活の質(QOL)を改善する効果が期待され、医療機関で開かれる患者向けヨガ教室も広がりつつある。

 長崎県諫早市の公共施設の一室。「はい、吸って。吐いてー」。ヨガ教室「Jrusie(ジェイルーシー)」代表の山田純さん(47)の声に合わせて、女性たちが体を動かす。全員ががん経験者だ。

 山田さんが、このクラスを設けたのは4年前。自身、卵巣がんを患ったことがきっかけだった。実は元看護師でもある。「がん患者は運動量が減りがち。ヨガで体を動かし、前向きになれる場をつくりたかった」と振り返る。

 定期的に通っている人は15人ほどで、特に多いのが乳がんの経験者。教室では「無理をしない」が「絶対ルール」。長崎市の主婦(50)は知り合いの紹介で1年半前から通っている。「深い呼吸で胸郭が広がったせいか、(手術で)リンパを取った右腕が上がりやすくなった気がする」と話す。

 山田さんが主宰するがん経験者向けの教室は3月、隣接する大村市の「おおむら海辺のクリニック」(乳腺外科、精神科)でも始まった。遠山啓亮(ひろあき)院長が山田さんに声を掛け院内でのレッスンが実現した。がん患者は、仕事や家庭の問題にも直面しやすく、精神的に不安定になることも少なくない。「運動は抑うつ症状を改善する効果が認められており、特にヨガはゆっくり自分のペースでできるのがいい」と遠山院長は言う。

 一方、福岡市南区の九州がんセンターでは3年前からヨガ教室を実施。月に3回あり、外部のがん患者も予約すれば参加できる。

 椅子に座ったままでできる動きが中心で、ゆっくりとした呼吸を繰り返しながら、体の変化に意識を向けていく。

 指導するのは「日本ヨーガ療法学会」認定ヨーガ療法士の二宮和子さん(65)。「しんどい時ほどヨガで自分の呼吸や体に集中し、心を穏やかにしてほしい」と強調する。卵巣がんで入院中の女性(75)は「習った呼吸法を不安で眠れないときに試してみたい」と話していた。

 こうした取り組みの背景には、国内外でヨガに関する医学的な研究が進んでいることがある。

 厚生労働省はヨガを、現代医療の補完代替療法と位置づけ、同省の「統合医療」情報発信サイトでは「不安、抑うつ気分、自覚ストレスを軽減する効果がある」と紹介している。

 ヨガの医療現場への導入を目指す「日本ヨガメディカル協会」(横浜市)の岡部朋子代表理事は「米国では200以上の病院でヨガが導入されている。特に乳がんは、ほかのがんに比べ予後(治療後の病状の見通し)が良く、その効果を実感しやすいのでは」と説明する。

 注意点もある。「ヨガを始める場合は、主治医に許可をもらい。無理はしないこと」と遠山院長。例えば乳がん患者の場合、腕を使いすぎるとリンパ浮腫などの後遺症のリスクを高めるケースもあるという。二宮さんによると「病名や病状を講師に伝えておくのも重要」とのことだ。

 山田さんのがん経験者限定クラスは1回千円。九州がんセンター=092(541)8100。


=2017/05/13付 西日本新聞朝刊=

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