食べて支える 漁村の復興 三陸ワカメと昆布 レシピ集完成 石巻と街の交流の結晶

婦人之友社が出版した「三陸わかめと昆布 浜とまちのレシピ80」
婦人之友社が出版した「三陸わかめと昆布 浜とまちのレシピ80」
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 東日本大震災後の交友から生まれた-と銘打たれた書籍「三陸わかめと昆布 浜とまちのレシピ80」がこのほど、婦人之友社(東京)から出版された。震災被災地の一つ、宮城県石巻市北上町十三浜を舞台に、地元の漁家と全国の生活者が交流しながら進めてきた、復興に向けた共同作業の結晶ともいえるレシピ集だ。

 十三浜地区は三陸海岸南部に位置する静かな漁村。2011年3月11日に起きた巨大な地震と津波によって壊滅的な被害に遭った。

 ジャーナリスト羽仁もと子・吉一夫妻が創業したことで知られる婦人之友社と、読者組織「全国友の会」、同夫妻が創設した私立学校「自由学園」(東京)のチームは当時、被災地支援を行う中、特産のワカメ養殖を軸に復興を目指す十三浜のことを知り、「浜の希望につながる価格で購入し、家庭の食卓にのせる」取り組みを始めた。

 そうした中、浜の側と街の側双方から「ワカメや昆布を使った料理をもっと知りたい」との声が上がり、多様な食べ方の知恵が集まった。それらをまとめたのが今回の一冊だ。

 ワカメとエノキの白あえ、茎ワカメの炒め煮、昆布のみそ漬けなど浜のおかあさんたちの伝統調理法をはじめ、ワカメとベーコンのオムレツ、ワカメとアサリのオリーブオイルパスタ、茎ワカメとカキのアヒージョなど、全国の料理好き読者や料理人、高校・大学生の考案したアイデア計80例が掲載されている。

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 今回の編集に携わった仙台市の小山厚子さんは、食を通じて社会を見つめ直そうと本紙が03年から展開している「食卓の向こう側」キャンペーンなどを通じて、本紙と親交がある。震災発生から間もないころ、「西日本新聞の読者の皆様へ。大地震と巨大津波によって、東北沿岸を中心に、農漁業をなりわいとする地域=食べものが生まれる場所と人が、大きな被害を受けました」と支援要請のメッセージを寄せた。

 これに応じて東北の農山漁村に足を運び、ささやかだが現場報告と支援の記事を書いてきた。今回のレシピ集の掲載写真にお顔が見える十三浜のリーダー佐藤清吾さん(75)は、震災の翌年、こう話していた。

 「震災で3世帯に1人の割合で家族を亡くした。すぐに、ここでもう一度、漁を再開するという思いにはならなかった人が多かったのは事実」「でも、悩み抜いて1年。どうするか、仲間内でぽつりぽつり話し合いながらワカメを養殖し、定置網をやり始めた」

 それらの歩みを支えたのが婦人之友社などの取り組みだったことが、レシピ集の文面から読み取れる。

 編集部は「漁船に乗せてもらって撮った、ワカメや昆布生産の様子も載っています。自然相手で厳しい海の仕事の理解にも役立ちます。食べ物を生み出す人とつながり、共に喜びあえる関係をつくりましょう」と呼び掛けている。被災地支援から一歩進んだ普遍的メッセージと受け止めた。

 同書は1512円。婦人之友社=03(3971)0101。


=2017/05/16付 西日本新聞朝刊=

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