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制服は必要ですか? LGBTの視点から 福岡市でシンポ 自分の性に沿った生き方がしたい 「標準服」は強要されない

制服の意義や学校現場でのジェンダー意識などにも議論が深まったシンポジウム=10月14日、福岡市
制服の意義や学校現場でのジェンダー意識などにも議論が深まったシンポジウム=10月14日、福岡市
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 性的少数者(LGBT)の観点から制服について考えるシンポジウム「LGBTと制服」が先月、福岡市で開かれた。子どもの権利保護のため、画一的な制服の在り方に疑問を呈してきた福岡県弁護士会が主催。弁護士と支援者、教員、研究者の4人が登壇し、参加者約180人も制服について考えた。

 会場では、ある高校生のナレーションがイラストとともに映像で流された。「制服を着た自分では息もしたくなかった」「つらさを分かってもらいたかった」「男女を別にした制服でなければこんな思いはしなくてすんだ」…。

 LGBTの中でも特に、体の性と心の性が異なる、または心の性が分からないトランスジェンダーの子どもは、自分の性自認と異なる制服の着用が深刻なストレスになり、不登校の原因にもなっている。

 映像を紹介したのは、福岡県を中心にLGBTの若者を支援する団体「FRENS」の石崎杏理さん。「性自認に沿った生き方をしたいだけなのに、制服を着ないと学校に行けない状況はとても過酷」と子どもたちの心を代弁する。「全ての子どもに教育を受ける権利があるのに、こんな状況があっていいのか」

 文部科学省が2014年、全国の小中高校、特別支援学校に行った調査によると、子どもが自身の性別に違和感を持ち、学校に相談した例は606件。うち約6割が保護者や他の生徒に相談できていなかった。

 石崎さんは「子どもは大人の『こうあるべきだ』という価値観を受けて育つため、LGBTを自覚しても『この状況が良くなることはない』『自分は笑われて当然』と相談することを諦めてしまう子どももいる」と相談の困難さを語った。

 佐賀大教育学部の吉岡剛彦教授は「学校現場は男女を区別して管理する場面が多い。異性婚や異性愛を前提としている教材や、不適切な教員の発言など課題は残る。『男らしさ』『女らしさ』の偏見はLGBT以外の子どもにとってもストレスになる」と、学校現場でジェンダーに対する意識をより高める必要性を指摘した。

   ◇    ◇

 女子の制服で、子ども自身がスカートかスラックスのいずれかを選べる学校も徐々に増えている。

 菅公学生服(岡山市)によると、女子の制服にスラックスを導入する学校はもともと寒冷な北海道や東北に多く、03年から次第に増加。16年の調査では、導入した中高校は約400校に上るが、九州はうち約20校にとどまる。同社は「温暖な気候や、(スカートを前提とした)セーラー服の割合が比較的高いためではないか」とみる。

 福岡女子商業高(福岡県那珂川町)は来年度からの本格導入を前に、本年度からスラックスをはいている生徒もいる。柴田晴夫校長は「検討のきっかけは防寒だったが、昨年聞いたLGBTの講演が決断の後押しとなった」と振り返る。制服の廃止も検討したが、学校への帰属意識を育み、教員がどの学校の生徒かを見分けやすいなど教育的効果もあり「選択肢を増やすことにした」という。

 そもそも福岡市の公立中学校は「制服」ではなく、着用が望ましいとされる「標準服」だ。着用を強要されるべきではない。ただ、現実は着用を強いる指導や空気があることは否めない。弁護士の松浦恭子さんは「子どもも大人と同じように権利の主体と考えると、子ども一人一人の人権や個性をどう守るか議論が必要だ」と指摘する。

 制服は今後どうなっていくべきか。議論では、(1)生徒の選択肢を増やす(2)選択しても周囲から浮かない配慮をする(3)カミングアウトを必要としない環境を整える-が挙げられた。

 柴田校長は、「相談があったら個別に対応します」という対処法では、子どもにカミングアウトを強要することになりかねないと懸念する。「事情を言っても言わなくても安心して学校に来られる環境づくりが必要だ。選べるようにすることで、全ての生徒が学校に行きやすくなる」と語った。


=2017/11/07付 西日本新聞朝刊=

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