パートナーシップ制度で動いたことは 行政の「承認」で 変わる同性カップル 東京・渋谷区 証明書交付から2年

パートナーシップ制度導入から2年の節目に向けて行った実態調査について、説明する東京都渋谷区の長谷部健区長(前列右)=5日
パートナーシップ制度導入から2年の節目に向けて行った実態調査について、説明する東京都渋谷区の長谷部健区長(前列右)=5日
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 ●社会との関わりが一層深まる 互いの関係を見つめる契機に

 東京都渋谷区が全国で初めて同性カップルに対し、結婚に相当するパートナーシップを認める証明書を交付してから、5日で2年たった。こうしたパートナーシップ制度を作ったのは全国で6自治体に上り、九州でも福岡市が導入を検討中だ。制度の導入で何が変わるのか。渋谷区と札幌市の取り組みを紹介する。

 制度を導入したのは、他に東京都世田谷区、三重県伊賀市、兵庫県宝塚市、那覇市、札幌市。10月末時点で、全国で134組が制度を利用しているという。

 渋谷区は同性カップル24組に証明書を交付。取得者の年代は20~70代と幅広く、11組は制度開始後に区内に転入してきたという。区は利用実態を把握しようと、取得者12人と取得を検討中の4人に対して今夏聞き取り調査を行った。

 区では条例を根拠に証明書を発行している。条例では区内の事業者に一切の差別を禁じ、証明書を持つカップルが不動産契約や手術の同意手続きで差別された場合、是正勧告をした上で事業者名も公表できる。ただ、証明書発行には公正証書作成が必要なため約5万円かかる。一方、他の自治体は首長権限で定めた要綱を根拠に、パートナーと宣誓したことを認める書類を発行。法的拘束力はないが費用はかからない。

 公正証書作成について、取得者からは時間や手間がかかる、法的知識がなく難しいといった声が上がった。長谷部健区長は「作成のために話し合う過程が2人の関係を見つめ直すきっかけになったと評価する声も多く、費用は思ったよりハードルになっていない」と分析し、「今後は補助も検討する」と方針を示した。

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 実際に証明書を活用した場面としては、パートナーが手術を受ける際に病院に提示▽生命保険の受取人指定▽携帯電話や航空会社のマイルなど家族向けサービスの利用-があった。住宅ローンや勤務先への説明に使いたいという人もいた。

 取得後にどんな変化があったのか。パートナーとの関係では「書類に『配偶者』と記入するようになった」「一緒に年を取ろうと約束した、という気持ちになった」などの声が寄せられた。取得を機に職場にカミングアウトし、福利厚生の適用を受けた人もいた。

 「今までうそをついたり、隠れたりしたことを行政から認めてもらえた」「社会に参加している感じ」「渋谷区内では守られる」など、証明書を社会からの「承認」と感じ、選挙に行くなど社会との関わりが深まる傾向も浮かび上がった。

 調査を担当した一人、国立社会保障・人口問題研究所の釜野さおりさんは「紙一枚で人の意識はこんなにも変わる。今後、行政の施策が進むことで当事者の意識や行動が変わっていく可能性を感じた」と語った。

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 札幌市は6月、政令指定都市として初めて制度を導入した。同性カップルに限定せず、性同一性障害に配慮して異性同士も対象とするのが特徴だ。

 原動力となったのは、当事者と賛同者でつくる市民団体の働き掛けだ。市民の多くが本気だと示そうと、署名の代わりに住民票144人分を添えて要望書を提出した。10月に都内で開かれたイベントで、市男女共同参画課の廣川衣恵課長は「賛同する人はもっと多いだろうと、非常に重く受け止めた。性の多様性を尊重する取り組みが各地域に広がると期待し、制度創設に踏み切った」と話した。

 導入にあたっては、庁内からも「法的な裏付けがない」「当事者がどれだけいるか分からない」など反対の声もあった。市民からは賛成1663件、反対816件の意見が寄せられ、反対二百数十件については文書回答を求められ、対応に追われたという。

 廣川課長は「市の戦略ビジョンである、互いの個性や多様性を認め合って誰もが生きがいと誇りを持つことができる街の実現を目指したいという一点で頑張った」と振り返り、今後は社会の理解を深める取り組みに力を入れることを強調した。


=2017/11/21付 西日本新聞朝刊=

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