母さんは「あるべき姿」を捨てました 障害ある子を持つ小林さん 絵本出版 「自分を生き始めた」 立ち直りの歩み

祐至さん(左)、弘児さん(中央)と絵本「笑顔のまほう」を読む小林典子さん
祐至さん(左)、弘児さん(中央)と絵本「笑顔のまほう」を読む小林典子さん
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 子どもの障害をきっかけにふさぎ込むようになり「25年間ほとんど家に引きこもる毎日だった」という福岡市早良区の主婦小林典子さん(53)が、自らの立ち直りの軌跡を絵本「笑顔のまほう」にまとめ、自費出版した。「こうであらねば…なんてこの世界にはないのかも」。自身の気づきを、家族が手掛けた挿絵と共に記した。「『今が苦しい、生きづらい』と思っている人みんなに届けたい」と言う。

 長男の弘児さん(27)に知的な障害があると分かったのは1歳半のころ。同じ年頃の子を見ては「どうして」と落ち込み、幸せそうな家族写真の年賀状が友人から届くと涙がこぼれた。長男が通う特別支援学校の送迎や、必要な買い物以外は外に出ない。他人との接触を極力避ける暮らしを続けた。「自己否定、ですかね。いろんな思いで心の中がぐちゃぐちゃだった」

 おととしの夏、ある書籍を手に取った。笑顔や前向きな思考が幸せを呼び込む‐。いわゆる自己啓発本。

 それが直接の「転機」とは思わない。でも、なぜ「笑顔」になれないか、自分と向き合ううちに、原因は勝手に思い込んでいた「あるべき姿」とのズレにある、と思うようになった。

 潮が満ちるような変化があった。徐々に笑顔が浮かぶようになる。すると弘児さんにも笑顔が増えた。「まるで鏡だなと思った」

 「心がイライラすると自分の頭をなでました」。絵本には、心を落ち着かせる自分なりのやり方も記している。挿絵は夫の祐至さん(53)と弘児さん、親族ら11人が担当。「1人で生きなくていいんだと分かって、やっと『自分』を生き始めた気がします」。A5判32ページ、1080円。問い合わせは文芸社=03(5369)3060。


=2017/12/05付 西日本新聞朝刊=

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