【とまり木どこに】短期入所編(1) 福祉での預かり、限界か

「WITH YOU」の活動ルームで、スタッフから夕食の介助を受ける鎮西哲平さん。宿泊体験には、母親の洋美さんと訪れた
「WITH YOU」の活動ルームで、スタッフから夕食の介助を受ける鎮西哲平さん。宿泊体験には、母親の洋美さんと訪れた
写真を見る

 学校の教室よりも広い活動ルーム。オレンジやクリーム色の壁がぬくもりを感じさせる。四つの居室には給湯付きの洗面台やエアコンまで完備。「暑がりの人もいるでしょう? 前に施設に入っていた時、僕自身が嫌だったんです」

 ここは重い障害者らの在宅生活を支えるため、生活介護や短期入所を行う多機能施設「WITH YOU」(ウィズユー)=福岡市南区。運営する同市博多区の居宅介護会社「きらきら」社長、溝口伸之さん(44)が自ら案内してくれた。

 生まれつき体の筋肉が弱っていく脊髄性筋萎縮症を患い、電動車いすで暮らす。自宅で介護してくれた家族が疲弊し、結局、病院に戻らざるを得なくなった苦い経験がある。「家族が楽になる環境をつくり、豊かな在宅生活を送れるよう自分でも何かできないか」と考え、同社を立ち上げた。

 ウィズユーは昨年4月に開設し、短期入所用に6床を確保。たんの吸引など医療的ケア(医ケア)が必要な人の預かりにも徐々に対応し、今秋、週1日から週3日に拡大した。医ケアの人の宿泊は旧国立病院や一部の入所施設などが受け入れているが十分ではなく、こうした福祉事業所が運営する施設は珍しい。

 活動ルームで食事の介助を受けていたのは南区の鎮西哲平さん(35)。生まれつき障害があり、たんの吸引が必要だ。母の洋美さん(61)は「お年寄りのショートステイはいっぱいあるのに障害者向けは少なく、事前の予約も必要。万が一の時に預けられる場所が増えてくれれば」と願う。

 同社は来春から、緊急時の受け入れにも対応するよう準備を始めた。

 ●困難な看護師確保

 最大のネックは「看護師の確保」と溝口さん。医ケアは個人差があり、特に子どもは容体も変わりやすく、初めての相手は慎重にならざるを得ない。現段階で医ケアが必要な人の受け入れは、同社のサービス利用者に限っている。施設看護師と同社の訪問看護師も加えて8人で日中、夜間を常駐する態勢を組むが、緊急対応には「施設に2人、夜勤専門にもう1人いなければ、年中無休のシフトは組みにくい」と言う。

 看護師の要望に応じ、入所者の脈拍や呼吸数を常時確認できるモニター設備も導入するなどし、施設整備の初期投資は1億円を超す。人件費を含む運営費は施設単体としては赤字が月間数百万円に上り、訪問看護などの別事業で賄っているのが現状だ。

 同社はもともと「最重度の人への対応」で知られ、利用は重度者の比重が高い。1人に複数のスタッフによるケアが必要となるため、結果的にコストもかかる“悪循環”-。溝口さんは「実際に始めると、態勢づくりはなかなか難しい」と本音をのぞかせる。

 ●「補助金」いつまで

 福岡市は本年度、医ケアの人を緊急時にも受け入れる短期入所施設を、地域生活を支える拠点の一つとして委託契約を結ぶ方針。既にウィズユーを最終候補(1カ所)に選んだ。委託費は年間約1600万円。施設側にとっては事実上、運営上の補助金となる。

 だがウィズユーの利用希望者は開設前、短期入所だけで100人に上り、うち医ケアが約6割を占めた。6床のうち2床を緊急対応用と想定するものの現在、利用登録は約60人。既に週3日の医ケア利用日は4床がすぐ埋まる状態という。

 来春から同社のサービス利用者以外にも門戸を広げる。現実的にどこまで緊急対応できるのか-。実績を積み上げなければ、委託契約も「いつまで続くか分からない」と溝口さんは懸念する。「福祉での対応はやはり限界がある。特に重度の人は、病院などの受け皿が増えてくれれば…」

   ◇   ◇

 在宅の障害者と24時間介護に携わる家族が増える一方、骨休めできる短期入所施設は少ない。理想の「とまり木」とは。現状と課題を考える。

    ×      ×

 【ワードBOX】医療的ケア

 たんの吸引や管を使った栄養注入、人工呼吸器の装着など重い障害者らが、日常生活を送る上で必要な医療行為。親や医師、看護師のほか研修を受けた介護士ら以外には認められない。治療ではない場合、病院は医療保険上は原則として福祉目的での一時預かりができない。昨年6月の児童福祉法改正により、自治体は医療や福祉などと連携し、ケアが必要な子どもの支援に努めるよう定められた。


=2017/12/07付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]