ホームスタート 経験あるボランティアが家庭訪問 広がれ、孤立化しない子育て

ホームスタートを利用する坂谷千春さん(右)とボランティアの和田清子さん(左)
ホームスタートを利用する坂谷千春さん(右)とボランティアの和田清子さん(左)
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 子育て経験のあるボランティアが、乳幼児のいる家庭を訪問し、親の話を聞いたり、育児を手伝ったりして支援する「ホームスタート」が広がっている。孤立しがちな親に寄り添うことで、子どもの虐待防止にも役立てようという狙いだ。九州でも各地で取り組みが続き、行政もその効果に注目している。

 ●「心の支えに」

 茨城県つくば市の坂谷千春さん(31)は、第2子を出産した8月からホームスタートを利用している。生まれたばかりの次男の世話で寝不足が続く中、2歳半になった長男が赤ちゃん返りして「心が折れそうな毎日」だった。実家は遠方で頼れない。「ホームビジター」と呼ばれるボランティア、和田清子さん(57)が来てくれるのが支えだったという。

 長男の遊び相手になってくれたり、お風呂に入れるのを手伝ってくれたり。「ゆっくり子どもたちに向き合う時間がつくれたことで、育児が少し楽になった」と坂谷さん。自身は2人の子がすでに成人している和田さんは「子育て中は周囲の人にたくさん助けてもらった。次は自分が手助けする番」と話す。

 つくば市で支援事業を担うNPO法人「kosodateはぐはぐ」の前島朋子代表理事は、子育てサロンを運営する中で「施設まで出てこれない人へのアプローチが必要」と実感し、導入を決めたという。

 ●対等な立場で

 こうした家庭訪問型の子育て支援ボランティアは40年ほど前に英国で生まれた。日本では2009年にNPO法人ホームスタート・ジャパン(HSJ)が発足。現在はHSJからノウハウを習得した地域の子育て支援団体などが全国27都道府県の95地域で活動していて、九州でも23自治体に実施団体がある。

 対象は未就学児のいる家庭で利用は無料。ビジターは専門の研修を受けた子育て経験者だ。訪問は週1回2時間程度、計4回までの利用が前提だが、状況に応じて増やすこともできる。これまで5100家庭が利用し、利用者の9割以上がサービスに満足し「悩みが軽減した」といった反応を寄せているという。

 HSJ代表理事を務める大正大教授(児童福祉)の西郷泰之さんは「専門家ではなく、無償のボランティアだからこそ、対等な立場で親の気持ちに寄り添える」と指摘する。

 ●普及これから

 「虐待してしまうかもと怖かった」。宮崎県都城市の女性(34)は昨秋、わらにもすがる思いでホームスタートを利用した。夫は出張が多く不在がち。0歳、3歳の子育てを1人で担い、ストレスで背中に帯状疱疹(ほうしん)ができた。家にいると子どもに手を上げてしまいそうで、毎日朝から子どもを連れて夕方まで外出していた。

 5人の子育て経験があるビジターに同行してもらい、ようやく病院で治療を受け、悩みを聞いてもらったことで救われたという。「1人で子育てしているんじゃない、もっと周りに頼っていいんだと気付かされた」と振り返る。今では子育てを楽しめているという。

 全国の児童相談所が2016年度に対応した児童虐待の被害は12万2575件と過去最多を更新した。社会構造の変化で人間関係が希薄になり、子育て家庭が孤立化したことが背景として指摘されている。

 行政もホームスタートに着目し、乳児家庭の全戸訪問事業のフォローアップとして活用する例も増えてきた。ただ普及には地域差がある。九州でも大分県内では12の団体が支援を続けているが、福岡県と長崎県には実施団体がない状況だ。

 HSJ九州エリア代表の土谷修さん(69)は「都市部こそ周囲に頼る人がなく、支援が必要な人は多い。どの地域でも利用できるように広げていきたい」と話している。

 問い合わせはHSJ=03(5287)5771。


=2017/12/16付 西日本新聞朝刊=

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