【とまり木どこに】短期入所編(3) リスク抱え、歩みだす病院

熊本再春荘病院の「レスパイト入院」を定期的に利用している親子=18日、島津智之さん提供
熊本再春荘病院の「レスパイト入院」を定期的に利用している親子=18日、島津智之さん提供
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 病院ならば、医療的ケア(医ケア)が必要な人を「安全」に預かってもらえるのでは-。記者も、重い障害のある息子(12)が気管切開などの手術を経て在宅生活に入ったころ、そう考えていた。実際は簡単ではない。医ケアは病気ではなく、レスパイト(親の負担軽減)という福祉目的では原則、医療が受けられないからだ。

 ●報酬は入院の半額

 病院も福祉サービスの一つ、医療型短期入所施設に指定されれば短期入所が可能だ。福岡市東区の入江内科小児科は市内の有床診療所(19床以下)では唯一、昨年12月に指定を受けた。

 もともと病児保育を手掛けていた。重症児(3)を抱える同院の看護師が復職を願い出たのを機に、医ケアの日中預かりや1泊2日の宿泊を始めた。院長の入江尚さん(60)は「人工呼吸器や胃ろうなどの子どもは増えている。少しずつ地域で受け皿を広げないと」と話す。

 ネックは短期入所の報酬が通常の入院より低いこと。病院に支払われる1人1日当たりの単価は、医療保険が適用される入院(診断や検査費を含む)の半額程度とされる。2階の病室に4床を確保。看護師に加え、たん吸引の研修を受けた介護士2人も雇って対応するものの「話せず、自分で動けない人だと目が離せない。お年寄り以上にマンパワーがかかる。経営的には厳しい」と入江さん。昨今の小児科医不足などを背景に、受け皿の拡大は「一足飛びには難しい」と感じる。「例えば行政が報酬を上乗せする財政的補助があれば、若いドクターたちもやる気が出てくるのでは」

 ●個室に「一人きり」

 西日本有数の小児専門の高度医療を行う福岡市立こども病院(東区)での短期入所を望む声も根強い。記者の息子も同院のNICU(新生児集中治療室)出身だ。しかし急病の患者に対応する急性期病院であり、現段階では「治療が必要な人を入院させる保険診療の原則から(家族の事情などによる)社会的入院をさせる選択肢はない」と地域医療連携室。半面「地域でレスパイト事業が必要とは認識している」という。

 同院は昨春、呼吸管理や投薬が適正かどうか評価するための入院を積極的に呼び掛けた。重症児を「評価入院」として受け入れ、その際、親に付き添いは求めない。「結果的に負担軽減につながれば」との狙いをうかがわせた。

 息子も勧められて2泊3日、入院した。病棟は個室で基本は室内で一人きり。具合も悪くないのに…と言いたげだった息子は浮かぬ顔だった。週末で病棟に保育士もおらず、親が気兼ねなく預けられる環境とは言い難い。同院はその後「通常の入院で満床状態が続いた」(同室)などとして、評価入院の呼び掛けは行っていない。

 ●地域で役割分担を

 一方、病名をつけた検査入院など「レスパイト入院」を積極的に行う病院も出てきた。熊本県合志市の熊本再春荘病院もその一つ。計8床でレスパイト入院と医療型短期入所、日中一時支援を行う。小児科医の島津智之さん(40)は「子どもにとって理想的な場所ではないかもしれないが、一番リスクを負えるのは病院では」と言う。10年以上受け入れを続ける同院でさえ、見慣れない人工呼吸器のほか、たとえ医ケアがなかったとしても、初めて預かる子どもの容体が悪化したことがあった。

 島津さんが考える地域のレスパイトのあり方は「役割分担」だ。夜間の泊まりはあくまで緊急避難的な位置付けとする。保育所や幼稚園、学校や児童発達支援事業所など「まず昼間に必ず預けられる場所」を確保して、親たちには自分の時間に充ててもらう。こうした施設は日中はスタッフが多く、何より「子どもにも療育や遊びの場所を提供できる」利点があるからだ。

 現状では医ケアの子どもに対応する「昼間」の施設も不十分。よりハードルが低そうな社会資源の拡充から少しずつ。「それが地域の力になる」と島津さんは信じる。

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 【ワードBOX】レスパイト

 「一時休止」「休息」「息抜き」という意味。障害児・者やお年寄りなどを在宅で介護、看護している家族を癒やすため、一時的にケアを代行し、リフレッシュを図ってもらう家族支援サービスを指すこともある。施設への短期入所や自宅へのヘルパー派遣などがある。こうした目的で医療保険で1週間程度、入院として預かる病院もある。主に神経難病やがん患者らを対象とするケースが多い。


=2017/12/21付 西日本新聞朝刊=

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