「同性間は性暴力ではない」警察の理解不足、根強く 男性やLGBT、知識に欠ける対応で二次被害も

熊本市で開いた相談員の養成講座で、性的少数者の性暴力被害の実態を報告するレイプクライシス・ネットワーク代表の岡田実穂さん(中央)=昨年11月
熊本市で開いた相談員の養成講座で、性的少数者の性暴力被害の実態を報告するレイプクライシス・ネットワーク代表の岡田実穂さん(中央)=昨年11月
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 2017年7月施行の改正刑法で強制性交等罪が新設され、女性に限っていた性暴力被害者の対象が広がり、性別を問わず適用されるようになった。参院の付帯決議は「被害の相談、捜査、公判のあらゆる過程で男性や性的少数者に対し偏見に基づく不当な扱いをしないことを関係機関に徹底させること」と盛り込んだが、警察や相談窓口の理解不足は根強く、啓発は緒に就いたばかりだ。性的少数者(LGBT)や男性の被害者を支援する団体が相談員向け講座を開くなど、九州でも取り組みが始まった。

 昨秋、熊本市で開かれた講習会。「警察に相談しても同性間で起きたことは性暴力ではないとして、真剣に受け止めてもらえないなどの相談が目立つ」。青森市のNGO「レイプクライシス・ネットワーク」の岡田実穂代表が、性的少数者や男性の被害者の声を代弁した。

 電話相談員に「女同士なら仲直りできる」と言われたり、自助グループの会合に「同性愛者は来ないで」と参加を拒まれたりする事例もあり、岡田代表は「LGBTに関する知識に欠ける対応で二次被害に遭う当事者は多い」と指摘した。

 同ネットワークは2008年から、被害者の電話相談や警察署への同行支援などに取り組んでいる。相談者の8割超が自治体のドメスティックバイオレンス(DV)の相談窓口など他機関に相談したことがあり、支援を断られたり、差別的な扱いを受けたりしたと訴えるという。

 刑法が改正されても「性暴力被害者は女性、加害者は男性」との認識は根強い。相談員を15年以上務める女性(62)は「自分の中の思い込みを問い直さないと、排除につながってしまう。現場の体制が整っていない危機感がある」と述べた。

 警察庁によると、昨年1~11月の強制性交等罪(7月の改正前は強姦(ごうかん)罪)事件の認知件数は1032件で、うち男性被害者は15人(7月以降)。LGBT当事者の被害に関する統計はないという。一方、宝塚大の日高庸晴教授(社会疫学)がLGBT当事者約1万5千人を対象にしたアンケートでは、8・3%が性暴力被害の経験があると回答。バイセクシュアル(両性愛者)女性が23・7%、レズビアン(女性同性愛者)が15・3%、ゲイ(男性同性愛者)6・6%などだった。

 郷田真樹弁護士(福岡県)は「捜査機関や弁護士、相談員への研修やシェルターの確保、相談機関と医療機関の連携も必要だ」と提言する。

 ●「被害は潜在化している 実態調査急げ」 レイプクライシス・ネットワーク 岡田実穂代表の話

 両性愛や同性愛、生まれたときに割り当てられた性別とは異なる性別で生きようとするトランスジェンダー、他者に対し性的欲求を抱かない無性愛などのLGBT当事者は、性暴力被害のリスクが高い。少数者であることから弱者と認識され、暴力をぶつけてもよい対象と取られがちだ。

 加害者の中にはLGBT当事者への嫌悪感を抱いていて、「矯正」させようと暴力を振るうケースもある。セクシュアリティー(性の在り方)を社会に隠している人は、加害者による暴露を恐れ、弱みを握られる形で被害を受けることも少なくない。

 相談の中で、自身が受けた行為について「これは性暴力というのでしょうか」と、被害を被害と認識できない男性やLGBT当事者もいる。「被害者は女性」とされ続けたことが大きな理由だ。国が被害の実態調査をして、性別にかかわらずさまざまな事案があり得ることを示さなければ、潜在的な被害者の支援につながらない。 (談)


=2018/01/16付 西日本新聞朝刊=

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