小さな子連れで美術鑑賞 おしゃべりOK 子どもも関心 九州でも取り組み広がる

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茅ケ崎市美術館で開かれた0歳からの親子鑑賞会=1月17日
茅ケ崎市美術館で開かれた0歳からの親子鑑賞会=1月17日
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 静かに鑑賞するのがマナーとされる美術館。年齢制限を設けている美術館はほとんどないが、実際は小さな子ども連れだとなかなか行きづらい。そんな中、子連れでも美術鑑賞を楽しんでもらおうと、おしゃべりOKの日を設ける施設や、乳幼児連れを対象にした鑑賞プログラムに取り組む施設が増えている。

 「この器、日常使いしてみたい」「角度によっていろんな色に見えますね」。普段はしんと静まりかえった館内に、楽しそうな声が響く。陶磁器専門の戸栗美術館(東京都渋谷区)は、毎月第4月曜を「話してもOK」の「フリートークデー」としている。展示替えの度に訪れるという女性(70)は「周囲に気兼ねせず、自由に感想を言い合いながら鑑賞できるのは、いい取り組み」と歓迎する。

 小さな子連れや、ガイドが必要な海外からの観光客にも気軽に鑑賞してほしいと、昨年6月から始めた。静かに鑑賞したいという人にも配慮して休館日を開館に切り替える形とした。学芸員の黒沢愛さん(27)は「来館者同士が話し合いながら鑑賞することで、作品の新たな魅力発見にもつながる」と期待する。

 三菱一号館美術館(東京都千代田区)も、昨年10月から月1回の「トークフリーデー」を試験的に導入している。広報の後藤夕紀子さん(37)によると、普段よりもベビーカーを押した親子連れの来館が目立つという。「通常の開館日でも会話を制限しているわけではない。周囲に配慮しながら、楽しんで鑑賞してほしい」と話す。

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 公益財団法人「1more Baby応援団」が2014年にインターネットで「子連れで美術館に行くのは何歳から?」と聞いたところ、20~30代の子育て中の男女が回答した平均は6・2歳、それ以外の人では7・5歳だった(7335人が回答)。就学前の子連れだと、周囲に迷惑をかけるから行けない、と思う人は少なくない。

 そんな中、茅ケ崎市美術館(神奈川県)では、2012年から乳幼児と保護者を対象にした鑑賞会を開いている。来館をためらう保護者が美術館に足を運んでもらうきっかけづくりに、との狙いだ。アートを通じた子育て支援に取り組むNPO法人「赤ちゃんからのアートフレンドシップ協会」(同市)の冨田めぐみ代表理事(48)が講師を務め、鑑賞のポイントや親の関わり方などを解説している。

 1月の鑑賞会には、0~3歳の親子7組が参加した。まだ歩けない赤ちゃんも、色とりどりの絵を見てうれしそうに声を出したり、指さしたり。1歳の子を連れた女性(34)は、「ぐずるかなと思ったけれど、こんなに興味を持つなんてびっくり。育児のリフレッシュにもなるし、これからも来たい」と話した。

 各地の美術館と協力し鑑賞会を開いている冨田さんは「鑑賞の仕方を工夫すれば0歳から楽しめる。全く違う視点で絵を見る子どもに、大人が刺激を受けることも多い」と話す。

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 九州でも取り組みは広がる。熊本市は14年、日本で初めて美術館にある子育て支援拠点として「街なか子育てひろば」を市現代美術館内に開設した。育児相談に応じる子育てアドバイザーが常駐し、地元のアーティストによる美術体験などのワークショップも毎月開いている。同館は「企画展の来場者にも子連れがかなり増えた」と手応えを感じている。

 福岡アジア美術館(福岡市)にも、絵本やおもちゃのある「キッズコーナー」(改修工事のため20日まで閉鎖中)があり、誰でも利用できる。展示室内にも塗り絵やパズルを用意して子どもが飽きないように工夫。第2、第4の火曜・日曜には、ボランティアによる絵本の読み聞かせと紙芝居も行っている。

 学芸員の山木裕子さん(44)は「アジアの文化や美術に、幼い頃から親しんで理解を深めてもらえたらうれしい」と話している。

=2018/02/06付 西日本新聞朝刊=

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