取材相手からのセクハラ、本紙女性記者が考えた 仕事への影響考え嫌と言えず 組織としてNO訴える姿勢を

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 前財務事務次官によるテレビ局の女性記者に対するセクハラ問題。全国の記者から、これは取材現場では特殊な事案ではない、と「#MeToo(私も)」の声が上がっています。そしてこれは、利害関係で優位に立つ営業先などからの「社外セクハラ」として、多くの人たちと共通する問題と考えます。私たち西日本新聞の女性記者も、こうしたセクハラの問題や課題について語り合いました。

 -今回のセクハラ問題についてどう思う?

 A(30代) 事務次官はその省庁のトップで、一対一で話せる機会はめったにない。「なぜほいほい会食に行くのか」という批判も聞くが、一対一でないと聞けないこともあり、性別に関係なく記者なら行く。

 B(40代) 20年近く前、東京で官僚や政治家を取材していたが、20年たってもまだこんなレベルなんだと残念に思った。

 C(40代) 私は一報を聞いたとき「あるだろうな」と思った。女性が好きだから、と担当記者が女性ばかりの国会議員もいた。

 A 逆もある。「女性記者だと機嫌が悪くなる」とうわさされている女性議員は、各社の担当記者がみんな男性。「○○ボーイズ」とか呼ばれていた。

 D(40代) 今後女性の要職も増える。セクハラに対する意識が変わらない限り、男女が入れ替わるだけで問題は解決しない。

 -取材相手からセクハラを受けたり、相談されたりした経験は?

 E(20代) 行政機関と記者との懇親会で幹部の隣に座らされて手を握られたり、セクハラ発言で私の顔が赤くなるのをからかわれたり。一対一の会食の際でも手を握られるが、被害を訴えればその人の家庭や立場を奪ってしまう、と考えると言えないでいる。

 C 警察官と会食したとき、相手がホテルを予約していることが分かって逃げた経験がある。でも、そんなことを社内で訴えたら「使えない記者」と言われると思って諦めてきた。我慢や諦めがあしき土壌を育んできたんじゃないか。

 D 相手の機嫌を損ねたときのリスクを考えて、被害を言えない。「西日本新聞にはもう話さない」「女性記者は面倒」と迷惑を掛けてしまう可能性もある。

 E 「家に来ないか」と誘われたのを断ったら、それから電話に出てくれなくなった取材相手がいた。その経験がショックで、嫌と言えないでいる。

 F(40代) 後輩にセクハラの相談をされて「私たちの時代もそんなことがあったよ」と言ってしまったことがある。セクハラへの意識が低い世代が退職するまでの我慢だ、と。

 G(20代) 先輩からそう言われると「そういうものなんだな、嫌だと思う方が悪いんだろうな」と自分に言い聞かせると思う。セクハラのうまい受け流し方を知ることが大切だ、と思い込んでいた。でも違いますよね。取材相手から手を触られたことがあったが、頭が真っ白になって何が起こったか分からなかった。今回のことでセクハラの話題になり、「あれもセクハラか!」と気付いた。

 B 取材先の人が酔って自宅に押しかけてきて、押し倒されかけたことがある。この社会ではどこでもあるだろうと思ったし、社外の人なのでセクハラという認識もなかった。黙ってきたことが現状を生んだと考えていて、反省している。

 H(30代) ネタが取れない、各社に情報戦で負け続ける、というのは特に新人のころはとても恐怖だった。それならセクハラを忘れてしまおう、と計算が働いた気がする。

 -セクハラをしない、させないためには?

 C 黙ってきたのがよくなかった。いちいち「嫌だ」と言わないと、何も変わらない。

 F 私が若いスタッフのことを「イケメン」と言ったら、同僚にセクハラだと指摘されてはっとした。逆の立場で考えると、「美人だね」とか容姿のことを言われたくない。指摘されて初めて気付くことがある。

 H 組織としてNOと言う体制、姿勢が必要。その会社の名刺で取材してセクハラを受ける、ということは、相手は「この会社は記者へのセクハラを問題視しない」と認識されているということだ。

 B 対外的に立場の強弱が利用される「対価型セクハラ」は、記者だけの問題じゃない。

 H 企業の広報担当の女性が、業界誌の幹部に会食で太ももを触られたという話も聞いた。また、被害者には男性もいる。取材相手との関係性などから、この座談会にも参加できない、という人もいた。

 D 性別に関係なく、職業人として相手と関係を築きたいですよね。

セクハラ、「対価型」と「環境型」

 厚生労働省は、職場におけるセクハラを「対価型」と「環境型」に分類している。

 「対価型」とは、仕事上の地位や権限を使って性的な要求をし、拒否や抵抗をされると解雇や降格などの不利益を与えること。「環境型」は、性的な言動により職場環境を悪化させ、その労働者が就業する上で見過ごせないほどの支障が生じること-と説明する。

 セクハラやパワハラに関するウェブサイト「セクハラ110番」を運営している「NPO法人ハラスメント協議会」(神戸市)は、環境型セクハラをさらに分類し、「視覚型」「発言型」「身体接触型」としている。セクハラかどうかの判断は「一般的な感じ方が基準となるが、被害者個人の感じ方によっても変わる」と指摘。「ただ、一般という概念もあいまいなので、勝手な思い込みや臆測はしないように注意が必要だ」としている。

西日本新聞社も調査へ セクハラ、パワハラ

 前財務事務次官のセクハラ問題を受けて、西日本新聞社は社員に対し、過去に受けた業務上のセクハラ、パワハラ被害の調査を実施します。女性、男性、職場を問わず、任意で報告してもらい実態を把握します。被害があった際、上司など職場の対応に問題がなかったかも含め、対応のあり方と防止策を検討していきます。

 西日本新聞社は就業規則に「セクシュアルハラスメントの禁止」を定め、社員からの訴えに対応しています。また、社員が加害者になることがないよう、社員向けのサイトで「防止のための心構え」や「避けるべき言動」を紹介し、加害者に対して厳しい対応をとる、と明記しています。

2018/05/01付 西日本新聞朝刊

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