「自分らしく生きる」を伝えたい NY在住 トシ・カプチーノさん 歌が希望だった…「遅咲きの半生」をミュージカルに

ステージにかける思いを語るトシ・カプチーノさん
ステージにかける思いを語るトシ・カプチーノさん
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 演劇評論家、プロデューサー、歌手…米国ニューヨークを拠点に、多彩な活躍を続ける男性がいる。トシ・カプチーノさん(56)。同性愛者として「自分らしく生きたい」との一心で渡米。40代で子どもの頃からの夢だった歌手活動を始め、4年前には同性パートナーと結婚した。“遅咲き”の半生をつづったソロ・ミュージカルを9日から日米8都市で上演中で、31日には故郷・福岡市でも公演する。

 「ゲイだとばれるのが嫌でいつもビクビクして、自分をさらけ出せんかった」

 ミュージカル「アラジン」のヒット曲などを歌い、踊りながら、博多弁を交えて振り返るのは自身の人生だ。90分間のステージでは、中学時代の初恋、東京での挫折、ニューヨークでのパートナーとの出会いなどをミュージカルに仕立て、赤裸々に語る。

 ゲイだと自覚したのは中学2年のとき。周囲に「おかま」とからかわれ、毎日がつらかった。唯一希望を持てたのが歌だ。高校2年でオーディション番組「スター誕生」の決戦大会に出場したのをきっかけに上京して歌手を目指した。

 だが、デビューはかなわず、26歳で福岡に戻ってめんたいこの配送アルバイトなどをして過ごした。その後、再び東京に出たものの、歌手の夢はすっかり諦めてしまった。

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 転機は34歳のとき。チラシで見つけたニューヨーク行きの格安航空券が運命を変えた。「相手の顔色ばかりうかがって、つきたくもないうそをつく毎日はもう嫌だ」。同性愛者の権利運動発祥の地とされ、多様な人々が暮らす街に憧れて、住む家すら決めずに日本を飛び出した。

 知人のつてで、たまたま得た職が、ブロードウェー・ミュージカルを日本に向けてプロデュースする仕事だった。性的少数者の人生に光を当てた「RENT」の日本公演などに携わるかたわら、演劇情報誌「シアターガイド」などに批評を書き始めて評論家として認められるようになり、米国の永住権も獲得した。

 ブロードウェーで切磋琢磨(せっさたくま)する俳優たちの姿に刺激され「見る側で力を養った今の自分なら」と再び歌への挑戦を決め、44歳で初めてキャバレーの舞台に立った。ニューヨークのキャバレーは、数々の舞台俳優がショーをする場だ。力強い歌声と軽妙なトークで人気を集め、定期的にショーを行うようになった。

 私生活では、2014年に10年を共に過ごしてきた米国人の同性パートナーと結婚した。現地では11年に同性婚が合法化されている。「事業に失敗して借金を負ったときも、責めずに支えてくれた相手。彼が背中を押してくれたから、夢をかなえられた」

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 今回のショーのタイトルは「大器“超”晩成」。「50歳を過ぎても人生を楽しめる、あきらめないで継続していれば、きっと何か成し遂げられる」との思いを込めた。目標は紅白歌合戦に出場すること。昨年は福岡ソフトバンクホークス戦で国歌を独唱するなど、少しずつでも目標に向かって進んでいる。

 その原動力は「苦労して育ててくれた母を喜ばせたい」という思いだ。「孫の顔を見せることができないし、いつまでも心配をかけている、という気持ちがあって。分かりやすい形で成功して、幸せなんだよって安心させたいんです」

 福岡市がLGBT(性的少数者)のカップルを公的認定する「パートナーシップ宣誓制度」が4月から始まるなど、国内でも多様な性に対する理解は広まりつつある。「葛藤している人、苦しんでいる人はまだまだ多いと思う。ショーを通じて、自分らしく生きることで、人生はより楽しくなるんだということを感じてもらえたら」と話す。

 ★「大器“超”晩成」公演★

 9日の米ニューヨークを皮切りに東京、秋田などで公演。福岡は31日午後7時から福岡市天神のアクロス福岡円形ホールで、大分は6月1日午後7時から大分市のカルチアパークで。

=2018/05/11付 西日本新聞朝刊=

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