90歳、何とありがたい 福岡女学院名誉院長 徳永徹さん 「原子雲のかなた」出版 出会いの中で見えた希望

「原子雲のかなた」を出版した福岡女学院名誉院長の徳永徹さん
「原子雲のかなた」を出版した福岡女学院名誉院長の徳永徹さん
写真を見る

 ●平和への思い託すために

 キリスト教系の大学や高校などを運営する福岡女学院(福岡市南区)の名誉院長、徳永徹さん(90)が「原子雲のかなた-新しい出会いと繋(つな)がり」(西日本新聞社)を出版した。6年前に学院の要職を退任して以降5冊目。意欲的に体験談を本にしてきた。今の元気の源は「90歳、何とありがたい」の心持ちだそうだ。

 東京出身の徳永さんは、父の転勤先、長崎市の旧制長崎中学で学び、旧制五高(熊本)を経て九州大医学部を卒業。国立予防衛生研究所(現感染症研究所)の所長を務めるなど基礎医学の研究に携わり、退官後の1994年から福岡女学院で院長や理事長を務めた。学生時代に洗礼を受けたキリスト教の信徒でもある。

 2012年に「凛(りん)として花一輪-福岡女学院ものがたり」を出して以降、祖父が明治時代に著した信仰書「逆境の恩寵(おんちょう)」の復刻、少年時代の戦時体験をつづった「少年たちの戦争」、原爆投下後間もない長崎での体験をはじめ、キリスト教との出合い、免疫学などの研究に専念した予研時代、教育者への転身など自身の戦後70年を回想した「曲がりくねった一本道」など、出版を重ねてきた。

 医学書の執筆経験はあったが、80歳を過ぎて書き始めたのは、能の大成者・世阿弥に触発されたから。名言「初心忘るべからず」には三つの初心があり、三つ目が「老後の初心」。年老いても、老後ならではの芸を学ぶ初心があり、それを忘れずに精進を-とのメッセージと受け止めた。

 最新作は、これまでの出版を機に、予期せぬ旧友や恩師の遺族との出会い、被爆体験を語り継ごうとする若者との交流など「不思議な出来事」が次々に生まれたことに「希望の光」を見いだし「平和への思いを後世に託す」内容となった。

 90歳。佐藤愛子さんのベストセラー「九十歳。何がめでたい」を読み、うなずく部分もあった。「でも、僕はむしろ、90歳、何とめでたい、いや、何とありがたいの心境」と話し、「少し休んだら、また、平和を願って何か書こうと思うんだろうな」と言い添えた。

=2018/05/15付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]