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【子どもの貧困を考える】連鎖解消へ無料学習 福岡市が教室 心の居場所にも

小学生の男の子が解いていた「百マス計算」のプリント。スタッフがマンツーマンで教えている
小学生の男の子が解いていた「百マス計算」のプリント。スタッフがマンツーマンで教えている
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 10月下旬、平日の午後4時。福岡市内にある施設に小中学生が次々に集まってきた。ランドセルやかばんを決められた場所に置き、出欠カードにシールを貼る。生活保護世帯の子どもたちを対象に、週1回開かれる無料の学習教室だ。

 「今日は何の勉強をしようか」。大学生のスタッフがさりげなく生徒の横に座り、マンツーマンの学習が始まった。真後ろでは小学1年の女児がかるた遊び。その横で「(人気グループの)EXILEの誰が好き?」とスタッフの女子大学生と女子中学生の3人が談笑していた。

 歴史の勉強をしていた中3男子は「教え方が分かりやすいし、楽しい。もっと回数を増やしてほしい」。小6女児は「家では親が忙しいから、教えてもらえない。こんな場所があって良かった」と瞳を輝かせた。

 無料教室は、生活保護世帯で暮らす子どもの高校進学率が低い現状を踏まえ、福岡市が昨年12月にスタートさせた。十分な教育を受けずに社会に出た子どもが、大人になって再び生活保護を受ける「貧困の連鎖」を断つための事業だ。

 三つのNPOに委託し、子どもへの接し方などの研修を受けた18~30歳のスタッフ(8割が大学生)が市内4カ所で教室を開いている。一つの教室でスタッフは9人。放課後の3時過ぎから7時前まで自由に通える。今年9月時点で55人の小中学生が登録している。

 受託団体の一つ「Teach For Japan」九州事業部のエリアマネジャー森山円香さん(25)は「家庭や周囲の環境で子どもの未来が制限されるのはおかしい。福岡市と協力しながら『現場』をしっかりつくり上げ、少しでも多くの子が教室に通えるようにしたい」と意気込む。

 保護世帯を対象にした無料学習支援は全国で94自治体(2012年度)が取り組むが、多くは受験期の中学生が対象。福岡市は小学1年から中学3年まで幅広く受け入れるのが特徴だ。

 学力格差を解消するには初期のつまずきを防ぐのが重要という面もある。一方で教室は遊びや雑談もできる空間にした。その思いについて福岡市保護課主査の福岡雅也さんはこう語る。

 「病気の親に代わって家事をしたり、幼いきょうだいの面倒を見たりして勉強をする時間がない。親も日々の生活と仕事で精いっぱいで子どもに注げるエネルギーがない。これまで相談したり甘えたりできる大人が周りにいなかった子どもたちが、心休まる居場所を見つけてほしかった」

 リラックスした表情で思い思いに学習や読書、遊びを楽しむ子どもたち。「言葉遣いが変わり、あいさつができるようになった。少しずつ信頼関係が築けているかな」。スタッフの一人、福岡教育大3年の中薗優輝さん(20)は笑顔でうなずいた。

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 子どもをめぐる貧困が深刻化しています。貧困に陥った家庭では、塾はおろか自分の机はなく参考書も買えません。貧しさからくる親の虐待や学校でのいじめで心身を病み、自己肯定感がないまま社会に出ても挫折してしまいます。私たちに何ができるのか。子どもの貧困の現場を歩き、随時報告していきます。

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 【ワードBOX】子どもの貧困

 厚生労働省によると、所得が平均の半分を下回る家庭で暮らす子どもの割合を示す「子どもの貧困率」は2009年で15・7%。6人に1人が貧困の状態にある。大人(親や18歳以上のきょうだいなど)が1人の世帯に限ると、50・8%に上る。学習環境に恵まれないケースが多く、12年度の全国の高校進学率は98%だが、生活保護世帯に限ると9ポイント低い89%。生活が苦しい家庭の子どもを教育面で支援する「子どもの貧困対策推進法」が6月に成立した。

=2013/11/09付 西日本新聞朝刊=

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