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若年性認知症の夫の作品展 福岡市の越智さんが企画 「記憶はなくても心はある」 介護者は抱え込まないで

夫との思い出が詰まった自宅で作品を手にする越智須美子さん
夫との思い出が詰まった自宅で作品を手にする越智須美子さん
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 ■新訳男女 語り合おう■ 
 色鮮やかで楽しげな絵の中に、何度も自分の名前を記した作品があった。忘れないようにと。福岡市で今年初め、若年性認知症だった越智俊二さん(享年62)の作品展が開かれた。企画した妻の須美子さん(61)は「記憶はなくなっても心や感情はある。夫の絵が認知症への理解を深めるきっかけになれば」と話す。

 2009年に亡くなった俊二さんがデイサービスや自宅で描いた約350点を展示した。花瓶に飾られた花などを題材に、想像を膨らませた独特の世界観が広がる。

 物忘れがひどくなったのは40代後半。仕事先で道に迷い、約束を忘れるといったトラブルが増えた。52歳で退職し、54歳で認知症と診断される。医師は病名を俊二さんにも告げた。抗議すると看護師に「すぐ忘れるでしょ」と言われ、ぼうぜんとした。

 次第にできることが減っていく。須美子さんは介護をしながら、家計を支えるためホームヘルパーとして働いた。目を覚ましたら分かるように、お互いの手首にひもを結んで眠る毎日。

 「夫も不安にさいなまれ、私も心身ともにつらかった。ただ、だからこそ何げないことの尊さに気づいたんです」。季節の移ろいを共に感じたり、湯気の上がる食卓を囲んだり。病気になる前と変わらない日常を大事にした。絵に打ち込むのも穏やかな時間だった。

 作品展の来場者は介護をした人も多く「一人で抱え込むと追い詰められる」と体験談を語り合った。須美子さんも何度も同じことを尋ねられ、イライラすることがあった。「いつも笑顔ではいられない。限界だったんですね」。そんな時、話を聞いてくれる友人や3人の娘に救われた。

 深い愛で結ばれた夫婦だから困難に向き合えた-。そう言われたりもするが、「特別ではなく普通の夫婦。懸命に一日一日を生きただけ」。講演会で各地を訪れる。認知症への偏見を恐れ、周囲に助けを求められない人もいる。特に男性介護者は孤立しがちだ。職場の両立支援も十分とはいえない。須美子さんは「介護に取り組む家族へのケアや支援の充実が必要」と訴える。 


=2014/03/08付 西日本新聞朝刊=

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