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演劇で自己を取り戻した女性描く ドキュメンタリー映画 「トークバック」 26日から佐賀市で上映 「声を上げる」 そこから始まる 坂上香監督

ステージに立つ女性たち(映画「トークバック 沈黙を破る女たち」より)
ステージに立つ女性たち(映画「トークバック 沈黙を破る女たち」より)
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坂上香監督
坂上香監督
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 ■新訳男女 語り合おう■ 
 封印してきた過去を女性たちが演劇で表現する。性暴力、薬物依存、虐待…。体験を語ることで自分を取り戻そうという米国での試みだ。その過程を日本人監督が追い、ドキュメンタリー映画「トークバック 沈黙を破る女たち」を制作した。監督の坂上香さん(48)=東京都国分寺市=は映像で何を伝えたいのか。佐賀市での上映(26日~5月2日)を前に話を聞いた。

 登場するのは、サンフランシスコを拠点に活動するアマチュア劇団「メデア・プロジェクト」。1989年に女性受刑者の更生プログラムとして始まり、現在は元受刑者やエイズウイルス(HIV)感染者を中心に構成されている。

 坂上さんは2006年、ニューヨークで「メデア」が主催した詩の朗読会を見て映画化を決意した。前作「ライファーズ」(04年)で罪を犯した人々が更生を目指す姿を描く中で「社会も変わる仕組みが必要」と感じ、両者をつなぐ「メデア」の表現手法が有効だと感じたという。

 ただ、取材許可を得て、劇団員たちと信頼関係を築くのは容易ではなかった。通算8年、20回以上にわたる渡米を経て、ようやく完成したという。

 映画は、10年に上演された劇「愛の道化師と踊る」の制作過程を8人の女性たちの姿とともに描く。

 劇団代表のローデッサ・ジョーンズさんは台本を作らず、役者たち一人一人に自分のパートを書かせる。稽古では、メンバーが車座になって互いの体験をシェアするのが恒例だ。

 ある女性は、薬物依存、売春、窃盗など数々の犯罪を重ねてきた。実は子どものころ、顔見知りからレイプされたが、周りの誰も助けてくれなかった体験があった。恋人にHIVを感染させられたり、薬物の売人だった養父に育てられて常習者になったり…。社会の偏見や差別の下、隠してきた過去が次々と語られる。

 その過程でメンバーは、自分をさらけ出すことや許すこと、仲間とつながることの大切さに気づいていく。坂上さんは「ささいなことでも、どん底の体験は誰にでもあるはず。遠い国の特殊な人ではなく、自分たちのことのように身近に感じてもらえたら」と話す。

 制作にあたっては市民参加型の手法を取り入れた。インターネット上で寄付を募る「クラウドファンディング」で宣伝資金を確保。編集段階で10回を超える試写を行い、薬物依存症の人やHIV感染者、医療従事者などさまざまな立場の人に見てもらい、編集に生かした。

 タイトルの「トークバック」は「言い返す」「口答えする」などを意味する。作品では沈黙を強いられてきた女性たちが「声を上げる」、人と「呼応し合う」という思いを込めた。

 「メデア」の舞台では、上演後に出演者と観客がHIVや薬物などについて討論する「トークバックセッション」を設けている。東京で上映が始まっているが、その会場でも詩の朗読会や演劇のワークショップ、対談などのイベントが開かれている。

 坂上さんは「薬物依存やHIVだけじゃなく、声を上げられないあらゆる人たちのストーリー。当事者でなくても、周りにいるかもしれないと意識してもらえたら」と話している。

 佐賀市での上映は「シアターシエマ」で。26、27日は上映後に坂上さんのあいさつとトークバックセッションがある。問い合わせはシアターシエマ=0952(27)5116。


=2014/04/19付 西日本新聞朝刊=

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