誤嚥性肺炎などを予防 のみ込む力つける 重症児にも口腔ケアを 毎日5分のマッサージから

シミュレーターを使って重症児の口腔ケアを演習するセミナーの参加者たち。講演した落合院長(中央)らが見守った
シミュレーターを使って重症児の口腔ケアを演習するセミナーの参加者たち。講演した落合院長(中央)らが見守った
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 口の中や周りを清潔に保つ口腔(こうくう)ケアは、虫歯や歯周病を予防するだけでなく、口の機能の発達や体の健康維持にもつながる。ただ障害がある人は口の中を触られるのを嫌がることも多く、十分なケアができにくい側面もある。在宅の重い障害児が増えるなか、福岡県久留米市でセミナーを取材し、介護者が口腔ケアを行う場合の留意点を聞いた。

 セミナーは、医師や看護師、特別支援学校の教員らでつくる「福岡の医療と教育を考える会」が主催。在宅の重症児が安心して暮らせる地域社会を目指し、学習会などを開いている。今回は元聖マリア病院小児歯科の診療部長で、地元のおちあい小児歯科医院の落合聡院長(56)が、口腔ケアの基本的な考え方とその方法について講義した。

 重症児の口腔ケアの目的として落合さんが挙げたのは、まず「誤嚥(ごえん)性肺炎など合併症の予防が期待できる」こと。食べたりのみ込んだりする(摂食嚥下(えんげ))機能に障害があると、食べ物や汚れが気管や肺に流れ込み、肺炎を引き起こすことがある。体の免疫力や抵抗力が低い子どもは少量でもその可能性がある一方、「口の中がきれいであれば、多少の誤嚥があっても危険は少ない」という。

 次に生活レベルの向上。口の中がきれいであれば飲食しやすく、摂食嚥下の練習もしやすい。逆に汚れていればうまく声も出ない場合もある。また口の周りや中が清潔に見えれば、介護者など見ている側も安堵(あんど)感を覚える。落合さんは「日常生活を快適に過ごすための方法」と指摘した。

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 重症児のうちチューブによる栄養注入(経管栄養)など口から食べない子の口は汚れないと思われがちだが、落合さんは「使わなければ歯石だらけになる」と注意する。

 ケアを受ける子どもの姿勢は、あおむけに寝かせて上半身を少し起こした程度。口の中がよく見えて誤嚥もしにくく、本人も楽だからだ。チェックポイントは(1)乾燥(2)たんなどの分泌物(3)出血(4)潰瘍(5)歯垢(しこう)など(6)歯の動揺(7)全体的な状態-の把握。乾燥しているとたいてい汚れはひどく、痛がって唇が出血することも。「何が原因でケアが必要なのか」(落合さん)を見極めた上で、適切なケアを順序よく行う必要がある。

 何歳から始めるにしても、大事なのは「口の中を触ることに慣れてもらうことから」と落合さん。保湿剤などを使って少し口の中を湿らせ、なじませた上で、まず指で唇や歯茎をマッサージする▽「指よりちょっとザラザラした」ガーゼや脱脂綿で歯を拭く▽歯ブラシを使う-など段階的に刺激を強め、歯磨きに慣れてもらう。マッサージのこつは「前から後ろ、1度離してまた前から後ろ」。同方向の刺激は、往復に比べて気持ち良く感じるという。

 また口の中を上下左右の4エリアに分け、左上から左下、右下に移って最後に右上など「必ず同じ順番で刺激をすると、子どもは予想がついて安心する」。食べ物のかすや分泌物を取れるスポンジブラシや、歯間ブラシ、舌ブラシなども有効とされる。重症児はたん吸引など日常的に医療的なケアが必要な子も少なくないが、落合さんは「忙しくても、5分程度、毎日行うこと」が重要と強調する。

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 落合さんは、こうした子どもや親を取り巻く社会的な現状にも言及。小児医療の進歩で昔なら救えなかった命が助かる一方、超低出生体重児の約5%は何らかの病気や障害があるという。

 「核家族化が進んで相談相手が減ったこともあり、病気や障害がある子を育てるのに不安や心配を抱える親が増えている」と警鐘を鳴らす。在宅の親たちの孤立を防ぐためにも、口腔ケアを生活支援の一つと考え、病院や福祉事業者らが地域全体で取り組む必要があるだろう。 


=2017/09/21付 西日本新聞朝刊=

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