私もショコラティエになれた 不登校など 若者の就労を後押し 熊本のNPO法人がチョコ店 「自信をつけて」

仮オープンを乾杯で祝うスタッフたち。右は森野瞬店長、左は島津智之理事長=3日午前、熊本市中央区の久遠チョコレート熊本店
仮オープンを乾杯で祝うスタッフたち。右は森野瞬店長、左は島津智之理事長=3日午前、熊本市中央区の久遠チョコレート熊本店
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熊本店の若者が製造を手掛けた「久遠テリーヌ」の3種類
熊本店の若者が製造を手掛けた「久遠テリーヌ」の3種類
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 不登校を経験するなどした若者を雇い、社会参加を後押しするチョコレート専門店が今月、熊本市中央区にオープンした。主に重い障害児を支援している認定NPO法人「NEXTEP」(ネクステップ、熊本県合志市)が、全国の福祉事業所と連携して障害者を雇用しチョコレートを製造・販売している「久遠(くおん)チョコレート」(本店・愛知県豊橋市、国内27拠点)とフランチャイズ契約を結び、運営している。

 障害者向けの就労支援は制度化されているが、この取り組みは障害者手帳を取得していなくても、対人関係に不安を抱えるなどして一般就労が難しい人たちを支援するのが狙い。全国的にも珍しく、チョコ作りや販売体験を通し、いずれは一般企業への就労につなげたい考えで、小児科医の島津智之・同法人理事長(40)は「従来の支援の枠に当てはまらない子どもたちの訓練の場として支えていきたい」と意気込む。

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 今月3日、同区上通町の一角。もともとはブティックだったというガラス張りの店内に、色とりどりのチョコレートが約50種類並ぶ。この日は熊本店の仮オープンで、開店直前にスタッフ全員がショコラショー(ホットチョコレート)で乾杯。そろいの帽子とエプロンを着けた女性(19)=熊本県益城町=は「きょうは緊張の方が大きいです」とはにかんだ。

 通信制高校を今春、卒業したばかり。筋肉や関節が時折強く痛む原因不明の線維筋痛症を患い、以前は杖をついて歩いていたことも。一時勤めたアルバイト先では、そんな体調の変化をよく理解してもらえなかった。

 レジ業務のほか実際にチョコレートも作る。本店で製造の研修を受けた島津さんらから約1カ月、作り方やこつを習い「温度調整してつやとか香りを出すのが難しかった」と言う。「ここは私の体調を知ってもらっている人が多い。今回は長く(勤務を)続けられれば」と前を向く。

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 同店は同県内の15~19歳の8人をアルバイトとして雇う。中学や高校で不登校を経験し、中退や編入によって通信制高校に通うなどしていた子どもたちで、多くは精神科や心療内科、小児科に通院中だ。体調に配慮しながら平日は2人、週末は3~4人が時給740円で1日に4時間半、交代で勤務。チョコの製造と販売も担当するが、他人とのコミュニケーションが難し
いことなどから、製造だけに携わる子も数人いるという。

 同法人は重度の小児専門の訪問看護ステーションを立ち上げているほか、学校に行けなかったり、家庭環境が複雑で社会に出られなかったりする子どもたちを、農作業体験を通じて支援してきた。島津さんと、本店を運営する一般社団法人の代表がもともと知り合いだった縁で、熊本店の経営にも乗り出すことにした。

 若者手作りのチョコは「抹茶」「ゆず」「ホワイト」の「久遠テリーヌ」3種類(各248円)。ネクステップの理事で店長の森野瞬さん(33)は「自分の作ったチョコレート目当てにお客さんが来てくれるようになって、自信をつけてくれれば」と語る。

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 島津さんは「普通高校に行って大学に進学して社会に出るというレールに乗れない、乗ろうとするとつぶれてしまう子どもたちに、現場で社会経験を積んでもらう取り組みは十分ではない」と指摘。支援の「谷間」にこぼれがちな若者たちのため「いずれ制度が追い付いてほしい」と願う。

 熊本産の野菜や果物のパウダーなどを活用したオリジナル商品の開発も視野に入れる。「生産者と若者たちがつながり、新たな雇用に結びつく効果」(島津さん)にも期待するからだ。

 営業は午前10時半~午後7時。火曜定休。同店=096(200)8418。 


=2017/11/16付 西日本新聞朝刊=

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