自宅での生活 どう支える 医療的ケア必要な子と家族 九州・沖縄の保育士らが研修会

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会場では、医療的ケアが必要な子どもが自宅で遊べるオルゴールなど玩具の展示もあった
会場では、医療的ケアが必要な子どもが自宅で遊べるオルゴールなど玩具の展示もあった
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 ●社会資源や制度 道半ばだが

 たんの吸引や管を使った栄養注入(経管栄養)など医療的なケア(医ケア)が必要な乳幼児が病院から自宅に帰る際、家族も含めてどう支えるか-。日本医療保育学会九州・沖縄ブロックの研修会が19日、福岡市内であり、小児医療に携わる保育士や看護師、理学療法士ら約50人が意見交換した。医療の進歩により自宅で暮らす重い障害児らが増え、その支援が始まって約10年。在宅生活をサポートする医療や福祉などの社会資源は十分ではない。保育を含めた関係機関の連携が不可欠であることが、あらためて浮き彫りとなった。

 ▼「利用せず」6割

 在宅の障害児が多くなったのは低出生体重児の救命率が改善し、新生児集中治療室(NICU)の長期入院が増えたためだ。常態化する満床状態を解消するため、厚生労働省は2006年、退院後の子どもや家族に対する地域の支援体制整備など在宅支援に乗り出した。福岡市立こども病院の病棟保育士、南里恭子さんによると「医ケアが必要な子どもの在宅医療が積極的になされるようになったのもこの頃」とみられる。

 同省の調査によるとNICU退院児の6割以上が吸引や経管栄養を必要とし、約2割が人工呼吸器管理など特に高度な医療が必要。自宅で医ケアを一手に引き受けているのは特に母親で、負担感が「ある」と答えた介護者が約8割に上る。ただし医ケア児の約6割が「障害福祉サービスを利用していない」と回答している。24時間介護に携わる在宅生活を支えるには、こうした子どもを一時的に預かる施設も不可欠だが「限りなく少ない」(南里さん)のも一因とみられる。南里さんは「家族をサポートする体制が少しずつ充実していってほしい」と訴えた。

 ▼家族も健康不安

 病院から自宅に移行する家族の支えになるのが相談支援専門員。子どもや家族が自宅で元気に暮らせるよう、家族の生活スタイルに合わせてヘルパーや訪問看護などさまざまなサービスを「つなぐ」役割を果たす。同市立心身障がい福祉センターの加納洋子さんもその一人。各事業所の担当者が家族も交えて会合を持ち、利用するサービスを調整する仕組みは15年度から本格化したが、専門員が実際に相談支援に関わるのは「退院するちょっと前が多い」のが現状という。

 家族によってはわが子の障害を受容するのに時間がかかったり、本人に代わって気管切開に踏み切るかなどの決断を迫られたりするなど、入院中から精神的な負担を抱える。加納さんは「専門員も、入院時のもっと早い段階から支援にかかわることが望ましい」と、医療と福祉の連携のあり方について語った。

 九州大大学院医学研究院准教授の濱田裕子さんは「専業主婦の場合は在宅生活の中で健康診断にも行けず、病気になっていることもある」と指摘。在宅生活を維持していくには「看護師や保健師、医療関係者は子どもの健康だけでなく、家族の健康も視野に入れる必要がある」と強調した。

 ▼発達支援も重視

 昨年の法改正により、医ケアが必要な子どもが適切な支援を受けられるよう、医療、福祉、教育などの連携促進が自治体の努力義務となった。これに絡み、会場からは「医療側はどうしても子どもの命や医ケアをどうするか、ということが先行しがち。遊びや発達支援の視点が後回しでは」(同市東区の療育施設の保育士)と問題提起も。加納さんは「その子が何が楽しいか、どれが楽な姿勢か、笑顔で過ごせることが免疫力を高める作用もあるだろうし、親子関係がそれでスムーズになれば支える家族の励みにもなる」と応じ、保育や療育との連携も重要との認識を示した。

 「家族頼み」からの脱却は道半ばだが、支援の輪は確実に広がりつつあるといえそうだ。


=2017/11/23付 西日本新聞朝刊=

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