52カ国の住民暮らす町 働けど実習生(7)

外国人からのさまざまな相談に応じている多文化共生コミュニティセンター=2月6日、群馬県大泉町
外国人からのさまざまな相談に応じている多文化共生コミュニティセンター=2月6日、群馬県大泉町
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 7人に1人。人口約4万1500人の群馬県大泉町は、外国人の割合が全国の市町村で最も高い。実に52カ国の人が暮らしている。九州の近未来の姿を求め、今月上旬、町を訪ねた。

 富士重工業やパナソニックの広大な工場が広がる。周囲には下請けや孫請けの町工場。この環境が外国人労働者を呼び込んできた。

 街を歩くとポルトガル語の表示が目立つ。バブル景気に沸く1990年、出入国管理法の改正で日系2、3世と家族の就労基準が緩和され、出稼ぎのブラジル人を大量に受け入れた。今も外国人の半数を占める。

 アジア系の人とも度々擦れ違った。近年の人手不足は日系人だけでは補えず、外国人技能実習生なども増えてきた。「日系人で慣れていて、抵抗感はない」。町の出先機関、多文化共生コミュニティセンターで通訳を務める吉岡セリアさん(58)は町民の意識を代弁してくれた。

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 「届いた郵便物を全て持ってきて」。吉岡さんは来日から日の浅い外国人が訪ねてくると、こう呼び掛ける。日本語が読めない上に頼れる人がおらず、公文書類を放置しがちだからだ。

 センターはさまざまな相談に応じ、ホームページでも15の言語で生活情報を発信。町は役場に通訳を常駐させ、転入者には区長を紹介。病院では5言語の問診票。「ポルトガル語だけでも生活できる」と言われてきた町はだてではない。

 一方で実習生は日系人のように定住できず、3年で帰国する。センターの服部真所長は「最近は入れ替わりが激しく、全員との接触は至難の業。行政としてできることを地道に続けるしかないが、ゴールはない」と気を引き締める。

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 災害時は地域の姿がよく見える。隣の群馬県太田市では外国人向け防災訓練があり、大泉町からも含めて13カ国約70人が参加した。3割は来日1年未満。グェンズィ・トアンさん(32)のように「ベトナムは地震がほとんどない。どんなものか分からない」と不安を抱える実習生も多かった。

 同時に、通訳ボランティア養成講座も開かれた。避難所の想定では「困ったことはないですか」と声掛け役を実践した。過去の被災現場では、外国人の孤立が常に課題とされてきた。

 ネパール人の会社員ブッディ・セルチャンさん(58)の姿もあった。大泉町は外国人コミュニティーの「キーパーソン」を掘り起こしており、その一人。定住25年の経験を生かして同郷の仲間をまとめ、住民や行政との橋渡し役を担う。「みんな日本を知りたがってる。僕がやらないと」。訓練には30人を連れてきた。

 行政、ボランティア、定住者…。総動員で先頭を走る大泉町でも「ゴールはない」。九州の私たちに相応の覚悟はあるだろうか。

=2017/02/28付 西日本新聞朝刊=

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