衰退期直視し戦略を 劇作家・平田オリザ氏 明日への提言(2)

平田オリザ氏
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 外国人留学生の不法就労や技能実習生の過酷労働の問題は、政府の本音と建前のはざまで生み出されたひずみだ。

 安倍晋三首相の支持基盤は財界と保守層。財界の求めに応じて「安上がりな労働力」として外国人をどんどん入れつつ、純血主義の保守層に配慮して「移民ではない」と建前を押し通してきた。移民政策の真っすぐな議論を避け続けた結果、各地で受け入れ態勢が整わず、異文化理解も進まないままトラブルが生じてきた。

 自民党の一部や九州知事会が留学生の就労制限(週28時間)の緩和を求めているが、場当たり的な発想だ。本来、留学生は知日派や親日派になったり、海外から新しい知識や文化をもたらしたりする大切な存在。それを労働者としか見ていない。短期的には企業利益は上がるかもしれないが、長期的には国益を損なっていることに気付くべきだ。

 僕は、移民を「適切にゆっくり受け入れていこう」という立場。そのために、政府や自治体は「どんな人材をどれくらい求めるのか」というビジョンを明確に打ち出さなくてはいけない。日本は海に囲まれ、日本語という高い障壁もあり、移民が急に大量に入ってくることはない。受け入れ計画を立てやすい。

 大分県や同県別府市は、立命館アジア太平洋大を誘致し、求める留学生像を明確にし、定住してもらうことで地域再興につなげた成功例。大いに参考になる。

 高度人材だけを入れろと言っているのではない。単純労働でもいいが、日本は欧米と比べてユニオン(労組)が極端に弱く、パートなど非正規労働者の賃金が低く据え置かれたままだ。きついのに低賃金だから日本人が集まらないのは当たり前なのに、外国人に置き換えるだけでは経済界の思うつぼで、雇用環境は一層悪化する。最低賃金を時給1500円くらいまで上げるべきで、外国人受け入れはそれからの話だ。

 一番大切なのは、私たちが「日本はもはやアジア唯一の先進国ではないし、成長社会でもない」という現実を受け止め、緩やかな衰退期に入った国としてどう振る舞うべきか考えることだ。24時間営業のコンビニやファミレス、すぐに着く宅配便が本当に必要なのか。少しの利便性を維持するために、私たちが嫌がる労働を外国人に肩代わりさせたままでいいのか。一人一人が向き合ってほしい。

 ◆平田オリザ氏(ひらた・おりざ) 劇作家・演出家。大阪大特任教授。異文化理解を促すため演劇を用いたコミュニケーション教育を手掛ける。近著に「下り坂をそろそろと下る」(講談社現代新書)。

=2017/06/08付 西日本新聞朝刊=

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