教育の整備 最優先に NPO法人責任者・田中宝紀氏 明日への提言(3)

田中宝紀氏
田中宝紀氏
写真を見る

 外国にルーツを持ち、日本語の指導が必要な子どもは全国で増え、文部科学省の統計で約3万7千人。全国の自治体の5割に居住している。だが、来日の時期や国籍、地域など事情はさまざまで、効果的な対策を取りづらい状況にある。

 公立の小中学校では2014年から、日本語教育を「特別の教育課程」で扱うことができるようになったが、対象者の2割しか受けられていない。外国人が多く暮らし、もともと支援の土台がある愛知県などの「集住地域」でしか導入できていないからだ。

 居住自治体の半数以上は各学校に1~2人しかいない「散在地域」。人材も予算もない中、公教育ですぐに対応するのは難しい。

 「勝手に外国人がやって来た」「企業が呼んで子どもがくっついてきた」「地域ごとにニーズが異なるから、地域でやるべきだ」という発想はずれており、国の責任を明確にする段階に入っている。外国人労働者の受け入れにかじを切っている以上、その家族の暮らしや教育の整備は最優先でやるべきだ。

 支援を受けられず、就学できていない子どもも少なくない。子どもたちの国籍は100を超えており、自治体に通訳の登録制度はあっても、支援が必要な子どもの母語を話せる通訳がおらず、「学校には日本語ができるようになってから来てください」と言われるケースもある。

 自治体や学校はいつ、どんな子どもが来ても、ある程度は対応できる準備が必要だ。そのための支援ツール、支援プログラムはインターネット上にたくさんある。例えば、支援ツールでは入学の手続きや修学旅行費の積み立てなどに関する翻訳、日本語の支援担当者が使える教材を集めたサイトがある。これらをフルに使えば、入学時の障害は乗り越えられる。

 それ以降はITの活用が効果的だ。集住地域では、初期の3カ月間、集中して日本語を教える「プレスクール」を自治体で開いているところがあり、これらの授業をインターネットで散在地域にも配信するなど、距離を超えた支援は十分に可能だ。

 国が今一番求めている高度人材の子どもに対する教育機関も不足している。インターナショナルスクールがある地域は大都市に限られており、学費も高い。日本で長く暮らしてもらいたいと思っているのであれば、公立の学校の中で支援を充実させていくしかない。

 ◆田中宝紀氏(たなか・いき) NPO法人青少年自立援助センター定住外国人子弟支援事業部責任者。これまで20カ国、500人を超える子ども、若者の日本語教育、就労を支援している。

=2017/06/09付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]