定住型への転換必要 未来を創る財団代表理事・石坂芳男氏 明日への提言(4)

石坂芳男氏
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 外国人労働者の施策は現在の「還流型」から「定住型」へと転換するべきだ。技能実習生のように数年で母国へ帰ることなく、安定して働く労働者を確保できることは企業側にもメリットがある。

 製造業や労働集約型産業は人手がいる。日本の製造業は、かつては地方から労働者を集め、海外人材としては日系ブラジル人に頼った。中小企業など下請け企業には高い賃金を出せない事情もあった。

 製造業は現場で仕事を覚えやすく、日本語があまり分からなくても一定の作業を習得することはできる。「トヨタ生産方式」の場合、日本発の品質や効率化を研究し続け、世界中の工場で作業工程を共有した。

 現在はアジアなどからの技能実習生が増加傾向にあるが、「研修」を名目に、実態は「低賃金労働」として利用しているケースが多い。こうした実態は改めるよう企業への指導を進める必要がある。

 彼らは数年で帰国してしまうが、模範的に働き、企業が必要とする実習生は少なくとも滞在の自動延長を認めてはどうか。定住したい実習生には在留資格変更を可能にする方法もある。

 私は米国トヨタ自動車販売社長などの立場で、米国やオーストラリアで13年過ごした。1990年代で既にLGBT(性的少数者)や、多様な人材を生かす「ダイバーシティ」という概念があった。職場にはさまざまな国籍の社員がおり、彼らの視点を企業戦略に生かした。

 グローバル企業でなくとも、職場に外国人が入るとコミュニケーションが活発化し、新しい知恵が生まれる。生産性が低いとされる日本のサービス産業の改善に、外国人の発想が役に立つかもしれない。地域コミュニティーも同様で、外国人が住めば高齢化した地域の平均年齢を下げる効果もある。

 高度外国人材は、企業や国を選べる立場にある。優秀な人材獲得には年功序列など日本的な人事政策は見直す工夫が必要だろう。米国のようなパフォーマンス重視や、日本型を組み合わせた折衷型が考えられる。

 国家戦略特区で今年3月から外国人の家事代行サービスが始まったが、パッチワーク的な政策では規模やスピードが足りない。外国人政策は入国管理や教育、医療、経済など多岐にわたる。総合的に進める官民組織「定住外国人政策委員会」を設置するなど、国を挙げて真正面から向き合っていく課題だ。

 ◆石坂芳男氏(いしざか・よしお) 2001~05年にトヨタ自動車副社長を務め、08年から顧問。外国人政策などを提言する「未来を創る財団」の設立に参画した。

=2017/06/11付 西日本新聞朝刊=

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