ぬか床は「魔法のベッド」 野菜の健康効果アップ 伝統食を後世に

栄養豊富なぬか。口に含むとかすかに甘い
栄養豊富なぬか。口に含むとかすかに甘い
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ぬか漬けは時間とともに味が落ちる。なるべく早く食べたい
ぬか漬けは時間とともに味が落ちる。なるべく早く食べたい
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たるには約70キロのぬか床。四季折々の野菜を漬ける下田敏子さん
たるには約70キロのぬか床。四季折々の野菜を漬ける下田敏子さん
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 和食に欠かせない漬物の一つ、ぬか漬けが改めて注目されている。ビタミンやミネラルが豊富で、腸内環境の改善にも役立つという。それを生み出すのがぬか床。上手な漬け方を教わろうと、100年近い昔から受け継がれてきたというぬか床を持つ福岡市中央区の「ぬか床の店 千束(ちづか)」を訪ねた。

 まずは店主の下田敏子さん(68)に基本から教わる。そもそも精米で削り取られた外皮=ぬかには栄養が豊富に含まれる。これを栄養源に増殖する多種の乳酸菌や酵母菌が、ぬか床には生きている。「野菜を漬ける」とは野菜の水分と栄養をぬかに引き出し、代わりに多様な菌と栄養分を野菜に吸収させること。半日から2日ほど漬けると、野菜の健康効果がアップする「魔法のベッド」なのだ。

    ◇   ◇

 では、その作り方。材料はぬか、塩(ぬかの7%)、水(ぬかとほぼ同量)に、粉砕した昆布、タカノツメ。ぬかは米穀店やスーパーで入手できる。できるだけ新鮮なものが望ましい。

 材料を、密閉できる大きめの食品保存容器などで混ぜ合わせ、乳酸菌を増やすため、何かの野菜を漬ける(捨て漬けという)。熟成期間は気温などの条件にもよるが、おおむね夏で2カ月、冬で3カ月ほど。表面に白いかび状の産膜酵母が張れば熟成完了。これは独特の香味や味の深みにつながるので、混ぜ込んで天地をひっくり返す。

    ◇   ◇

 日ごろの手入れで気をつけるのは混ぜる頻度。下田さんによると「毎日混ぜるのかとの質問が多い」が、一般家庭にある量のぬか床なら野菜の出し入れだけで十分という。なぜ混ぜるのかというと、嫌気性の乳酸菌を空気に触れさせ、異常増殖を抑えるため。もし放っておいて産膜酵母が張ったら、最初に熟成させた時と同様に混ぜ込めばいい。

 普段の置き場は、人間が快適と感じる所。温度が高過ぎると発酵が進み過ぎる。旅行など長期間扱わないときは冷蔵庫に保管する。

 ぬか床は、野菜の水分で次第に軟らかくなる。耳たぶより軟らかい程度に保つため「たしぬか」を加える。ぬか床の材料のうち水以外を混ぜ合わせたものだ。

 「ぬか床は生き物」(下田さん)。毎日観察してきちんと手入れをすれば愛着も湧く。

    ◇   ◇

 漬け方は野菜によって異なる。(1)そのまま(2)塩もみして水分を搾った後(3)米のとぎ汁で半ゆでし冷水で冷ました後‐の3通り。(2)はあくやえぐみを除くため。(3)は硬い物やあくの強い野菜だ。

 漬け込んだ後は、ぬか床の表面をならし、ペタペタと手のひらでたたいて空気を抜く。漬ける時間はニンジンなど硬いものは1日半から2日間、そのほかは半日から1日程度。

 千束のぬか床のルーツは、江戸時代初期にさかのぼる。豊前小倉藩主が「保存食の妙法」として、前統治地の信州から伝えたのが始まりという。小倉の旧家では母から娘への嫁入り道具の一つとして代々受け継がれており、千束のぬか床は少なくとも下田さんの祖母の代にあったのを引き継いでいるという。

 下田さんは「素晴らしい伝統食を後世に伝えたい」と願っている。

      ◆

 千束は、すぐに漬けられる熟成ぬか床(1キロ1080円)を販売。ぬか床の診断も無料でしている。092(522)6565。

 ●野菜の漬け方

 【そのまま】ダイコン、ニンジン、ウリ、カブラ(以上は皮をむく)、キュウリ(へたを落とす)、ピーマン(縦二つ割り)、キャベツ(1枚ずつ剥がして)、オクラ、だし取り後の昆布

 【塩もみ後】ナス(へたを落として縦二つ割り)、大根葉、水菜(以上二つは根元に十文字の切れ目を入れる)、ウド、ツワ

 【米とぎ汁で半ゆでした後】ゴボウ、ブロッコリー、カリフラワー、カボチャ、ジャガイモ、タケノコ、ワラビ、ゼンマイ、フキ


=2017/09/20付 西日本新聞朝刊=

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