菌ちゃんパワー、土に命 佐世保の有機農家 吉田俊道さん 野菜に養分、ぐんぐん育つ

生ごみリサイクルによって栽培されたチンゲンサイなどの元気野菜
生ごみリサイクルによって栽培されたチンゲンサイなどの元気野菜
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「生ごみ漬物」と土の混ぜ方を教える吉田俊道さん
「生ごみ漬物」と土の混ぜ方を教える吉田俊道さん
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約1カ月間発酵させた「生ごみ漬物」。乳酸菌のにおいがする
約1カ月間発酵させた「生ごみ漬物」。乳酸菌のにおいがする
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 今年最初の研修会には九州のほか東京、岐阜などから45人が集まった。長崎県佐世保市の有機農家、吉田俊道さん(58)の農園で、生ごみを活用した「元気野菜」づくりを学ぶためだ。

 植物の抗酸化成分「ファイトケミカル」を取り上げた先月の連載でも紹介したように、吉田さんの研究と、実践に裏打ちされた手法や考え方は全国の自治体や市民団体が注目する。昨年も各地から招かれ、約150回の講演などをこなした。

 この日は初心者でも失敗しない土作りがテーマ。通常は、細かく刻んだ生ごみに、有用菌を培養したぬか(ぼかし)をまぶし、土に混ぜ込んで発酵させる。一方今回は、ぼかしと生ごみを混ぜ合わせて約1カ月密封、菌たっぷりの「漬物」にしてから土に混ぜる、より確実な方法を伝えた。「甘酸っぱい乳酸菌のにおいがするでしょう。食べても大丈夫です」。吉田さんが熟成した「生ごみ漬物」を指さした。

   ◇    ◇

 栽培の鍵を握るのは「菌ちゃん」。吉田さんは愛情と親しみを込めて微生物をこう呼ぶ。菌ちゃんこそが植物に養分をもたらす重要な役割を果たす。いわば土の命。多ければ多いほどパワーにあふれた土になる。

 土の命とは何だろう。植物は光合成でつくった炭水化物を地中に張り巡らした根を通して微生物に与える。片や微生物は地中のミネラルを溶かして吸収し、栄養素をつくって根から植物に渡す。これが生物を成長させる力。野菜本来の滋養にあふれる元気野菜の「生命力」になる。

 微生物はすべての有機物を分解して土に返す「私たちの命のもと」(吉田さん)。植物との持ちつ持たれつの関係も含めて「命のリレー」を展開する。こうした自然の循環と共生の原理によって元気野菜は育つ。

   ◇    ◇

 研修には有機農家や就農予定の人もいる。最も遠方は新潟市食育・花育センターの主査佐藤克彦さん(40)。同市は2014年、吉田さんの講演をきっかけに保育園などでの生ごみリサイクルに取り組み始めた。佐藤さんは今回「より良い農業体験を実現させ、子どもたちの元気な体づくりにつなげたい」と自費で参加したという。

 研修では畑も見学、生き生きした野菜に驚きの声が上がった。無農薬は虫食いが当然と思っていたが、元気野菜は虫を寄せ付けにくいという。

 虫は弱ったり腐ったりした野菜を好んで食べ、土に戻して新しい生命に変える。「虫は敵、菌は敵という洗脳から解かれるべきだ」と吉田さんは強調する。

 自宅から片道1時間半の所に菜園を持つ東京都の会社員、鰐渕覚さん(42)は吉田さんの著書に出合い生ごみリサイクルを始めた。作ったキャベツの甘さに「土でこれだけ違うとは。すごい」と感激したという。

 漬物方式で大根を栽培した福岡市の内科医、今井一彰さん(47)は「何もしていないのに虫もつかず、見事な大根が収穫できた。これは革新的」と驚きを隠さない。

 吉田さんの手法は、化学肥料や農薬に頼る従来の農法とは大きく異なるが、実際に体験すると、多くの人が菌ちゃんと元気野菜の力に納得させられる。これからもファンを拡大していくに違いない。昼食にいただいたニンジンジュースの濁りのない甘さに、そんな予感がした。

 ▼生ごみ漬物のつくり方 (1)生ごみにぼかし(ホームセンターなどで購入できる)をまぶす(2)密閉容器に入れ約1カ月保管(3)熟成したら土と混ぜ合わせる。1平方メートル当たり10キロが目安(4)雨よけのポリエチレンシートをかぶせ周囲を土などで押さえる(5)1カ月以上混ぜずに寝かせれば出来上がり。詳細は「大地といのちの会」事務局=0956(25)2600。水、日曜休み。


=2018/01/17付 西日本新聞朝刊=

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