<32>関西老舗の味、福岡で守る 天天,有(福岡県粕屋町)

二人三脚で店を切り盛りしてきた高木文博さんと公子さん夫婦。「味は変えるな」という師匠の言葉を守っている
二人三脚で店を切り盛りしてきた高木文博さんと公子さん夫婦。「味は変えるな」という師匠の言葉を守っている
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福岡県粕屋町大隈409。ラーメン500円、キムチラーメン600円、チャーシューメン650円。営業時間は午前11時~午後8時半。定休日は木曜日。092(938)1463。
福岡県粕屋町大隈409。ラーメン500円、キムチラーメン600円、チャーシューメン650円。営業時間は午前11時~午後8時半。定休日は木曜日。092(938)1463。
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 京都の「天天有」と関係あるんですか? 関西出身者や在住経験者からしばしば聞かれる。福岡県粕屋町の県道沿いに店を構える「天天,有(てんてん ゆう)」店主の高木文博さん(50)はこう答えている。「身内の店です」

 京都の天天有といえば1971年に創業し、鶏がらスープが人気の老舗である。高木さんは粕屋町の生まれで縁はなさそうだが「妻の実家が大阪の店を経営。京都の創業店は義父の兄が始めたんです」と教えてくれた。

 高校卒業後に就職し、大阪でサラリーマン生活を送った。大のラーメン好きで、当時付き合っていた妻、公子さん(52)の実家にも食べに行った。「鶏がらだけど、九州の人にも受け入れられるような懐かしさもある味」というのが第一印象。店は大繁盛し、結婚を前提に付き合ううちに、洗い場などで手伝いもするようになっていた。

 89年に結婚。それから4年ほどたったころに転機が訪れた。「父親が亡くなり、母親を一人にできないので福岡に戻ろうと決めたんです」。勤務先に転勤を願い出たが認められなかった。そこで思いついたのがラーメンだった。「豚骨ではないので、逆にいけるかも」。義父に「やりたい」と告げると二つ返事で受け入れてくれた。大阪店で1年間の修業を経て、1994年に福岡県篠栗町に店を構えた。29歳での再出発だった。

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 「小さい頃からラーメンが好きだったけど、まさか作るようになるとはね」。高木さんはそう言いながら一杯を差し出した。

 鶏の足、頭、小骨の3種を7、8時間煮込んだというスープは豚骨と見まがう白濁色。一口すすると、とろりとした口当たりで、鶏の甘みとうま味が舌を包み込む。スープとよく絡む中細麺も一気に完食。最後は「義父直伝」という卓上のニラキムチを投入。味の変化を楽しみながらスープを飲み干した。

 97年に今の場所に移転した。最初は珍しさもあり、人気が出たが、売り上げが伸びない時期もあった。鳥インフルエンザで仕入れ先の確保に追われる経験もした。「やめようと思ったこともありますよ。でも自分で選んだ道だから」。苦労ばかりではない。工場勤務だったサラリーマン時代とは違い、面と向かって「おいしい」と言われるのが何よりもうれしいという。

 「仕込みも忙しい。最初はいやでしたけど、夫が『やる』と言うから」。ラーメン店の苦労を身に染みて知る公子さんはそう振り返る。高木さんは「あっという間に20年以上がたった。いろいろあったけど、よう付いてきてくれた」。はにかみながらパートナーに感謝した。 (小川祥平)


=2016/02/04付 西日本新聞朝刊=

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